宇宙探査の未来を変える「星のナビゲーション」の将来性

今回の研究によって、「星の位置のわずかなズレ(視差)を手がかりに、宇宙船が自力で自分の位置を割り出せる可能性」が実際に示されました。
これは一見するとシンプルなことですが、実は人類がこれまで一度も実際の宇宙空間で証明できていなかった画期的な成果です。
私たちは地上でスマホやカーナビを使えば自分の位置を簡単に知ることができますが、宇宙の深部ではそうはいきません。
地球から離れるほどGPSは届かなくなり、宇宙船をナビゲーションする方法は限られてしまいます。
ましてや、太陽系の外の別の恒星を目指すような航海を考えると、地球からの信号に頼っている余裕はありません。
それほど遠い場所では、電波信号が往復するのに何年もかかってしまうからです。
こうした状況で注目されるのが、今回ニューホライズンズが使った「星そのものを目印にする」という非常に古典的な方法でした。
古代の航海士たちは星座の位置を見て海の上で進路を決めましたが、それを宇宙探査に応用したわけです。
そして今回の実験によって、実際に探査機自身が星の視差を計測して自分の位置を割り出せるという事実が、宇宙空間で初めて実証されました。
とはいえ、この方法にはまだ改善の余地があります。
実際に今回得られた探査機の位置の精度は約6600万キロメートルという規模であり、宇宙探査においてはまだまだ十分な精度とは言えません。
しかし、研究者たちによれば、より性能の高い大口径の望遠鏡や精密なカメラを搭載した探査機を使えば、この精度をさらに劇的に向上させられる可能性があるとのことです。
具体的には、将来的には約0.01天文単位(約150万キロメートル)という精度も視野に入っています。
この距離は太陽と地球の距離の100分の1に相当し、宇宙スケールでは非常に高い精度です。
こうした精度が実現すれば、探査機がはるかに効率よく恒星間の長い旅路を進めるようになるでしょう。
また、今回の研究で特に面白かった発見は、航行精度を高めるためには「多くの星を観測するよりも、近くの星をたった2つだけ観測する方がよい」という一見意外な事実でした。
私たちは普通、多くのデータを集めれば精度が高まると考えますが、この場合は逆に、観測対象を限定して高精度で測定するほうがはるかに効率的だったのです。
その理由は明確で、遠くの星ほど視差が小さくなり、測定誤差が大きくなってしまうからです。
プロキシマ・ケンタウリやウルフ359のような近くの星ほど視差が大きく、正確な位置の目印となります。
こうしたことから、未来の恒星間航海では近くの恒星だけを高精度に観測することが、最適な方法になる可能性が示されたのです。
さらに興味深いのは、この宇宙規模の航法技術が特別な観測装置を追加せずとも、宇宙探査機に元々備わっている観測カメラをそのまま利用できる点にあります。
言い換えれば、将来の宇宙船は自分の目(カメラ)を「宇宙の六分儀」のように使って進むことができるかもしれないのです。
これは、まさに古代の航海士たちが星空を見上げて海を渡った姿を彷彿とさせます。
今回の研究チームも、この成果をハワイの伝統的航海士カレパ・ベイバヤンさんに捧げています。
ベイバヤンさんは、星を頼りに太平洋をカヌーで渡るポリネシア伝統航海術の達人でした。
その古代からの航海術が、今再び宇宙探査という最先端の科学と結びついています。
宇宙空間で自分の位置を知る方法は、技術が進んだ未来においても、やはり星空にそのヒントがあるのかもしれません。
では、この星を使った航法は実際にどれくらい現実的な方法として使えるようになるのでしょうか?
そして、その実現にはあとどれくらいの時間と工夫が必要になるのでしょうか?
さらなる研究の進展が待たれます。
原点に返るということですね。
まあ星の海を渡るのですから同じ手法も使えますよね。
きっと太陽風とか恒星間空間の進み方も航海術の応用で何とかなってしまったりするのでしょう。
>>星をみる探査機
まぁたこの、どっかで見覚えのある画像!!