2種類のイメージング技術を併用する「OneTouch-PAT」
OneTouch-PATの中核は、「超音波イメージング」と「光音響イメージング」という2種類の技術を組み合わせている点です。
まず光音響イメージングでは、レーザー光を乳房内部に照射し、光を吸収する分子が熱を持って膨張するときに発生する音波を検出します。
これは、がん組織に特有な血管の分布や密度を鮮明に映し出すのに非常に有効です。

これに加えて、超音波による構造画像を同時に取得することで、がんの形・位置・深さなど、詳細な情報を一度に把握できます。
通常これらのシステムは、専門家が手動でスキャンするか、別々の装置を使用する必要があります。
OneTouch-PATでは、患者が同じ立ったままの姿勢で両方のスキャンを行い自動的に組み合わされるため、操作ミスなども生じません。
さらに、研究チームは独自に開発した3次元の深層学習ネットワークを導入。
これにより、解像度の向上、血管の強調表示、ノイズ低減 などが実現し、医師が診断しやすい鮮明な3D画像を自動生成できるのです。

そしてこの新しいシステムは、健常者4人と乳がん患者61人、計65名に対して試験されました。
その結果、参加者の乳房組織の鮮明な3D画像を即座に取得することに成功しました。
また、乳がんの3つの代表的なサブタイプ(Luminal A、Luminal B、Triple-Negative)それぞれに特有のパターンがあることを観察・分類に役立てることができました。
さらに従来の方法ではがん検出が難しい「デンスブレスト」体質の人の病変を検出する点でも優れていました。
臨床現場での使用には更なる研究が必要ですが、研究チームは、いずれOneTouch-PATが既存の診断法を補完する可能性に期待を寄せています。
この技術が普及すれば、「痛みが怖くて検査を避けていた」人たちがもっと気軽に検診を受けられるようになり、そのことが早期発見・早期治療に結びつくことでしょう。
後は内視鏡検査前の下剤と断食をですね…。