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Credit: Luciana da Costa Carvalho et al., Journal of the American Chemical Society(2025)
history archeology

謎に包まれていた2500年前の「神への捧げ物」、ついに正体判明 (2/2)

2025.07.31 17:00:57 Thursday

前ページ青銅壺に残された「謎の物質」

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ハチミツの「分子の指紋」が2500年後に浮かび上がる

今回の再分析では、赤外分光法(FTIR)や熱分離型GC-MS、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEC-MS)、さらにはタンパク質を分解して解析する「ボトムアップ型プロテオミクス」など、複数の手法が組み合わされました。

その結果、現代のミツロウやハチミツと非常によく似た化学的特徴が、壺の残留物から確認されました。

特に決定的だったのは、ハチミツに特有の「ヘキソース糖」が高濃度で検出されたこと、そしてローヤルゼリーの主要タンパク質(MRJP1・2・3)が検出されたことです。

これらのタンパク質は、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)由来であることも突き止められました。

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Credit: canva

さらに銅製の壺内での化学反応により、ハチミツ中の糖が「フラン類」と呼ばれる耐久性の高い成分に変化し、保存されていたことも明らかになりました。

銅イオンが微生物の活動を抑え、糖の分解を防いだ可能性があるのです。

また、残留物にはハチの巣(ハニカム)そのものが供えられていたとみられ、焼けた砂糖のようなにおいを放つ褐色のフィルムも検出されました。

これは加熱や経年劣化によって糖がカラメル化したことを示しており、「焼けたハニカム」のような状態に変質していたと考えられます。

長年、謎に包まれてきた「神への捧げ物」の正体は、科学の力によってついに明かされました。

かつての祈りが込められた甘い黄金――それは腐ることなく、神殿の壺の中で2500年の時を静かに待ち続けていたのです。

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謎に包まれていた2500年前の「神への捧げ物」、ついに正体判明 (2/2)のコメント

愛王丸

歴史って浪漫ですね。
現代の科学力の凄さ!

人類は、何処まで進歩するのか、楽しみです。

東亞剛性

ナゾの供物がハチミツでよかった

禍々しいものじゃなくてよかった

ゲスト

現代の分析技術により蜂蜜であるという事が確認された事自体は結構な事だが、

>考古学者たちは、これが「ハチミツを神への供物として捧げたものではないか」と推測しました

とあるように蜂蜜であるという事自体は昔から言われていた事。
 じゃあその昔から言われていた「蜂蜜」という仮説を否定する根拠となっていた

>1970年代から1980年代にかけて行われた複数の科学分析では、壺の中から糖類は一切検出されず、動植物性の脂肪やロウに近い成分が主体である

という分析結果はどうなったの?
 ロウは蜜蝋が含まれていたから検出されるのは当然として、「糖類は一切検出されず」という結果になった理由や、「動植物性の脂肪に近い成分」が含まれていたのは何故なのか?
 それらが間違いだったという理由も説明出来なければ、1970年代から1980年代にかけて行われた複数の科学分析と今回の分析結果の間には矛盾があるという事になり、どちらの結果を信用して良いのか判らなくなります。

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