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別種の雄クローンを作って、雑種の働きアリを生み出す女王アリ / Credit:Canva,ナゾロジー編集
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ある女王アリは『別種の雄クローン』を産んで”雑種の働きアリ”を作っていた (2/2)

2025.09.05 11:30:28 Friday

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「女王アリが別種のクローンオスを“産む”」驚異の仕組み

ラボでの観察と詳細な遺伝子解析が、驚くべき事実を明らかにしました。

隔離されたMessor ibericusの女王アリから、なんと2種類のオスアリが“産まれるのです。

ひとつは自分と同じ種のオス(体が毛深いタイプ)、もうひとつは「Messor structor」とまったく同じ遺伝子を持つ“別種”のオス(毛がほとんど無いタイプ)。

どちらも女王アリが産んだ卵から生まれた個体ですが、両者は遺伝的にも明確に区別できました。

特に「Messor structor型」のオスは、核DNAは完全にM. structorそのものですが、ミトコンドリアDNA(母系遺伝)は女王(M. ibericus)のものでした。

これは、女王アリが「自分の卵から、M. structorの精子のみを用いて“他種のクローンオス”を生み出している」ことを示唆しています。

卵の中から女王自身の核DNAを除去し、過去に体内に保存していたM. structorの精子、またはすでに自分の巣内で維持してきたクローンオスの精子のDNAだけが次世代オスとして発現するのです。

こうして産まれた“クローンオス”は、さらに女王アリと交尾し、雑種の働きアリを作るための「精子供給源」として使われます。

この仕組みにより、Messor ibericusの女王は「自分の巣の中だけで、M. structorオスのクローンを維持し続ける」ことが可能となり、周囲に別種のコロニーがいなくても、雑種の働きアリを安定して生み続けることができます。

この「異種のオスを自ら生み、雑種を作る」という現象は、これまで動物界では報告されたことがありませんでした。

研究チームはこの現象を「xenoparity(異種産生)」と名付けています。

ちなみに、この方法で作り出された別種のクローンオスは、野生のM. structorオスに比べて形態が異なり(スリムで毛が少ない)、遺伝的多様性も低くなっており、家畜化にみられる特徴とよく似た傾向を示しています。

今回の発見は、一部の科学者を困惑させています。

「そもそも種とは何か」という概念すら揺るがしかねないものなのです。

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ある女王アリは『別種の雄クローン』を産んで”雑種の働きアリ”を作っていた (2/2)のコメント

ゲスト

もはや何でもあり、アリさんすごい。

ひの

Messor ibericus と Messor structor を単純に別種として扱うことはできないでしょう。生殖を介して連合を形成している species complex ということになるでしょう。

ゲスト

非常に興味深い。
自らのミトコンドリアは提供するが、DNAは提供しない。
新しいタイプの家畜というか奴隷というか・・・。

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