自分が公平だと思っている人も影響から逃れられない

今回の研究から同じ講義内容でも教授の性別が男性か女性かによって、学生がその授業をどう感じるかに大きな差が生まれることがわかりました。
この結果はとても重要です。
なぜなら、学生が評価するときには、内容そのものだけではなく、教授の性別という「本来は関係ない要素」が密かに影響しているということをはっきり示したからです。
こうした「無意識の偏見」は、私たちが社会の中で知らず知らずに身につけてしまったものです。
そのため、男性が中心となってきた分野や職業では特に、女性が評価の場で不利になってしまう恐れがあります。
もし女性教授がいつも低く評価されてしまったら、当然その影響は教授自身の採用や昇進などにも及ぶでしょう。
その結果として、大学教授という職業が男性ばかりになってしまうという悪循環が起きてしまうのです。
今回の研究対象は、イタリアの大学で哲学を専攻する学生でしたが、こうした評価の偏りは実は哲学以外の分野でも見つかっています。
研究者たちは、実際の授業の場面では今回の実験よりももっと強く性別の影響が現れるだろうと指摘しています。
なぜなら、実際に先生と学生が対面して授業を行う場合、声や表情、話し方などから感じる性別のイメージはさらに強く伝わってしまうからです。
もしそうだとすれば、学生が先生の教え方や能力を評価する制度(学生評価、SET)は、「公平な教育の質」を測る指標としては問題があるかもしれません。
特に注目すべきなのは「自分は偏見なんて持っていない、公正に判断できる」と考えている人でも、この影響から逃れられないことです。
今回の研究は、そんな私たちの「見えない偏見」に光を当て、その克服に向けた大切な一歩となるでしょう。