与えすぎのサイン②:「過剰補償」
与えすぎの2つ目のサインは、「過剰補償(overcompensation)」です。
これは「自分は十分でない」と感じる不安から、必要以上に相手に尽くしてしまう行動を指します。
本来は相手がやるべき仕事や用事を肩代わりし、「自分が役立てば愛されるはず」と思い込んでしまうこともあります。
2025年のテルアビブ大学(Tel Aviv University)の研究では、1000人以上の若年成人を対象に「恋愛における恐れ」が調査されました。
最も一般的だったのは「無能であることに対する恐れ」、つまり「相手の期待に応えられないのではないか」という不安でした。
そして、この不安こそが、過剰補償を引き起こす主要因であると指摘されています。
このような不安を抱える人は、自分の価値を「相手に何をしてあげられるか」に依存してしまうため、求められていない行動まで「やらなければ愛されない」と感じてしまいます。
こうした過剰補償は一見「献身的」に見えますが、実際には不安に駆り立てられた行動です。
相手にとっては「重さ」や「圧力」として伝わり、かえって関係が悪化するリスクが高くなります。
では、過剰補償に気づいたときはどうしたらよいのでしょうか。
まずは深呼吸して、自分に次のような問いかけをしてみましょう。
「私は、相手が離れてしまいそうだから、必死に与えていないか?」「最初は自然にやっていたのに、今は不安や焦りで与えすぎていないか?」「もし自分がもっと安心していられたら、同じことをするだろうか?」
こうした問いかけを通して、自分の「与える理由」をこまめに見直すことが大切です。
確かに、恋人に「与える」ことは愛情表現の一つですが、それが過剰になれば不満や不安を生み、やがて関係を破綻に導きます。
研究が示すように、健全な関係を保つには「努力の相互性」が欠かせません。
自分が与えている理由が「心からの愛情」なのか「愛されたい恐怖」なのかを振り返り、行動を見直すことが、バランスの取れた関係を築く第一歩となるのです。