なぜこんな個体が誕生し、化石として残ったのか?
「双頭トカゲ」はなぜ生まれたのでしょうか?
現生動物の例からも、遺伝的な異常や発生時の偶発的なトラブルが重なることで、ごく稀に体軸の一部が分岐し、2つの頭や首が生じることが知られています。
しかし、化石からは発生時の詳細な環境や遺伝的な背景を特定することはできません。
また、今回発見された個体は非常に未熟な段階で化石化したため、成長後にどうなったのか、どれほどの期間生きていたのかはわかっていません。
ただ一つ確かなのは、この個体が生きていた当時の遼寧省は、火山灰や湖沼に覆われた特殊な環境で、生物の死骸が急速に埋もれて保存されやすい“化石ホットスポット”だったということです。
羽毛のある恐竜や古代の魚類など、世界的にも保存状態が抜群な化石が数多く発掘されている場所です。
今回の双頭トカゲも、偶然にもその保存に最適な環境にいたことで、1億年以上の時を越えて姿を残したのです。
著者らは、この化石が「世界最古のバイセファリズムを示す証拠」として極めて価値が高いと評価しています。
通常の生態だけでなく、こうした異常個体も古生物学的な記録として残ることが、生命の多様性や発生の不思議を物語っているのです。