海のCO₂を“生分解性プラスチック原料”に変えることに成功
DOCで回収されたCO₂は、すぐにプラスチックになるわけではありません。
次のステップでは、特殊な触媒を使って、CO₂をギ酸(formic acid)に変換します。
次に研究チームは、遺伝子改変を施した海洋性細菌「Vibrio natriegens」を使い、 ギ酸を唯一の炭素源・エネルギー源として与えることで、コハク酸(succinic acid)という有機酸を生産させることに成功しました。
ギ酸は微生物にとってエネルギーの詰まった“ごはん”のようなもので、この細菌がギ酸を使ってコハク酸を作り出します。
コハク酸は、「ポリブチレンサクシネート(PBS:自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に自然に分解される生分解性プラスチック)」などの製造に欠かせない原料です。
実験では、1リットルあたり最大1.37グラムという効率での生産を実現しました。
この一連のプロセス(海水からCO₂を取り出し→ギ酸に変換→細菌でコハク酸を合成)は、持続可能社会を支える基盤技術になると期待されています。
もちろん、今後は工業規模へのスケールアップ、プロセス統合による効率向上、さらなるコストダウンなど課題も残されています。
それでもこの先、海のCO₂が“未来の資源”として、私たちの暮らしに新たな価値をもたらしてくれる、そんな可能性が見えてきました。