謙虚な人の脳は、拒絶で過剰に傷つかず、好意を素直に喜べる
まず注目されたのは、「予想外の評価」を受け取ったときの脳の反応です。
研究では、「予想外の評価」と「予想どおりの評価」を比べたときの脳活動の差と、謙虚さの関係が調べられました。
謙虚さの低い参加者では、この差が大きくなっており、下頭頂小葉や上側頭回といった領域が強く動いていました。
これらの部位は、自分に関係する情報を処理したり、「自分はどう見られたのか」と考え込んだりする際に関与するとされています。
つまり予想が外れたときに、「なぜ自分がこんな評価をされたのか」という思考に強く引き込まれている状態だと言えます。
一方、謙虚な参加者では、同じ「予想外の評価」と「予想どおりの評価」を比べても、これらの領域の活動の差が小さく、有意に弱くなっていました。
研究者はこれを、謙虚な人が評価のズレを過度に「自分の問題」として抱え込まず、より落ち着いて受け止めている神経学的証拠だと解釈しています。
動揺しにくいのは、必死に感情を抑えているからではなく、そもそも自己中心的な考えに引き込まれにくいというわけです。
次に、他人から好意的に見られたときの反応です。
謙虚な人ほど、「好かれたとき」と「嫌われたとき」を比べたときに、腹内側前頭前野や腹側前帯状皮質と呼ばれる、報酬や価値判断に関わる脳領域で活動の差が大きくなっていました。
これは、謙虚であることが「褒められても嬉しくない」ことを意味しないどころか、人から好かれることを、きちんと価値ある出来事として感じていることを示しています。
さらに研究チームは、脳領域同士のつながりにも注目しました。
感情の価値づけに関わる腹内側前頭前野と、行動を抑える役割を持つ下前頭回とのつながりを調べたところ、謙虚な人では、「感情にブレーキを強くかける」のとは少し違うパターンが見られました。
これは、つらい感情を力づくで押し殺すよりも、「こういうこともある」と状況を捉え直すことで、気持ちを整えている可能性を示しています。
行動データでも、謙虚な人は予想どおり好かれた場面で、より高いポジティブな感情を報告していました。
つまり、脳の活動と自己報告の両方から見て、謙虚な人は「拒絶に対しては過剰に傷つかず、人から好かれたときにはきちんとうれしい」という感情パターンを示していたのです。
もちろん、この研究には限界もあります。
参加者が中国の大学生に限られているため、文化差の影響は否定できません。
また、実験は写真と二択のフィードバックによる、比較的単純なやり取りに基づいています。
現実の人間関係は、時間をかけて築かれ、相手との歴史や文脈も絡み合う、より複雑なものです。
今後の研究では、文化の異なる集団を比較したり、長期的な人間関係の中でのフィードバックが、謙虚な人の心と脳にどのような影響を与えるのかを調べていくことが課題になるでしょう。
また、社会不安が強い人などに対して、「一時的にでも自分への注目を下げる」という謙虚さに近い心の持ち方をトレーニングすることで、拒絶への耐性を高められるかどうかも、今後の重要なテーマになりそうです。
自分に過度にこだわらないことが、傷つきにくさと喜びの両立につながる可能性があるという点で、この研究は「謙虚さ」という性格の意味を脳レベルで改めて照らし出したと言えるでしょう。

























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