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最古級の植物画に見られる「数学的思考」の証拠 / Credit:Yosef Garfinkel(HUJI)et al., Journal of World Prehistory(2025), CC BY 4.0
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世界最古級の植物画を発見、8000年前の「数学的思考」の証拠だった (2/2)

2026.02.12 20:00:31 Thursday

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花弁の数に潜む「数学的な思考」

研究の最も注目すべき発見は、花の描写に見られる花弁の数です。

いくつかの器の底部には、円形に広がる花が精密な対称構造で描かれています。

その花弁数は、4、8、16、32、さらには別の配置では64という数でした。

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花弁の数は4、8、16、32、64で描かれている / Credit:Yosef Garfinkel(HUJI)et al., Journal of World Prehistory(2025), CC BY 4.0

これらの数は偶然ではなく、4から始まり2倍ずつ増えていく並び、つまり幾何級数を形成しています。

これは円をきちんと同じ大きさに分ける力がなければ実現できません。

たとえば花弁を16枚描くには、丸い面を16等分し、中心から同じ角度で線を引く必要があります。

つまり、空間を正確に分ける感覚があったことを示しているのです。

研究者たちは、これを「数学的な思考」の証拠だと考えています。

表現抽象的な数式や記号体系があったということではなく、文字よりも数千年も前に、生活の中で培われた分割や均衡の感覚が芸術に反映された可能性を指摘しているのです。

なぜそのような能力が必要だったのでしょうか。

研究者らは、共同耕作を行う村落社会における、収穫物を公平に分け合うといった場面で、「きっちり等分する力」が重要だった可能性を挙げています。

誰かが多く取りすぎないようにするためには、「同じ大きさに分ける」「同じ数だけ配る」といった感覚が自然と磨かれます。

その実践的な経験が、器の装飾という形で可視化されたのかもしれません。

さらに興味深いのは、描かれている植物が穀物や果樹などの食用作物ではないという点です。

農耕社会であるにもかかわらず、実用的な作物ではなく、観賞的な花や枝が中心に描かれていました。

これは儀礼的な豊穣祈願というよりも、美的な関心が背景にあった可能性を示唆しています。

研究者たちは、花の色や形の整った対称性が、人の気分を明るくすることも指摘しており、植物モチーフは「役に立つから」ではなく「見ていて気持ちが良いから」選ばれたと考えています。

つまりハラフ文化の土器は、単なる装飾品ではなく、空間認識、対称性の理解、分割の概念といった抽象的思考の痕跡を内包していた可能性があります。

文字も数字も存在しない時代に、すでに人々は「分ける」「揃える」「倍にする」という概念を感覚的に操っていたのかもしれません。

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