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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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認知症の発症後「ある音と恋に落ちた」男性の症例 (2/2)

2026.03.04 12:00:38 Wednesday

前ページスピットファイアの轟音に涙するように

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戦闘機の音が好きになった「脳の仕組み」とは

CPには、音への執着以外にも変化が見られました。

性格は以前より短気になり、他者への共感が薄れ、衝動的になりました。

家族の死に無関心だったり、人の話を頻繁に遮ったりするようになります。

甘いものを好むようになり、チェスやワードパズルに強く没頭する傾向も見られました。

しかし興味深いことに、過去の出来事を思い出す能力や言語能力には明確な問題がありませんでした。

最終的に彼は「行動型前頭側頭型認知症」と診断されました。

しかしチームは、彼の症状が従来の分類に完全には当てはまらないことに注目します。

画像検査では、右側頭葉の大きな萎縮が確認されました。

右側頭葉は、社会的な手がかりの理解や、言語以外の情報から意味を読み取る働きに関与する領域です。

研究者たちは、これを「右側頭型」と呼ばれる前頭側頭型認知症の亜型と考えました。

このタイプでは、行動型と意味型の特徴が混ざり合うことがあります。

そして本症例は、新たな「強いこだわり」や「異常な嗜好の形成」が、この亜型の特徴である可能性を示唆しています。

さらに重要なのは、認知症が「音の処理」に影響を与える可能性です。

一般には、難聴が認知症のリスクを高めると報じられることが多いですが、この症例は逆の可能性を示します。

つまり、認知症が脳の音処理システムを変化させ、特定の音に対する快楽や嫌悪を生み出す可能性があるのです。

アルツハイマー病研究でも、複数の音を分離する能力の低下など、聴覚処理の変化が報告されています。

CPの症例は、それが「音への恋」として現れた、極めて印象的な例と言えるでしょう。

記憶だけではない、認知症の多様な顔

認知症と聞くと、多くの人は記憶障害を思い浮かべます。

しかしこの症例は、認知症が人の感情、快楽、嗜好、さらには音の意味づけそのものを変えてしまう可能性を示しています。

突然生まれる強いこだわり。説明のつかない好き嫌い。

それは単なる性格の変化ではなく、脳の変化が反映されたサインかもしれません。

CPの物語は、認知症の症状がいかに多様であるかを私たちに教えてくれます。

早期診断や適切な支援のためにも、「記憶」以外の変化に目を向ける視点が、これからますます重要になるでしょう。

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