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デルポイの神託の巫女は「地下ガスを吸って」トランス状態になっていた? (3/3)

2026.03.05 21:00:59 Thursday

前ページ長い間「伝説」とされていた地下ガス

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巫女が吸っていたのは、どんなガス?

1996年、研究者たちはギリシャ政府の許可を得てデルポイの岩盤を採取し、化学分析を行いました。

その結果、石灰岩にはエタン、メタン、エチレンといった炭化水素が含まれていることが判明しました。

この中でも特に注目されたのが「エチレン」です。

エチレンは炭素と水素からなる炭化水素で、現在ではプラスチック製造などに使われる重要な化学物質です。

さらに興味深いことに、かつてエチレンは医療の現場で麻酔ガスとして使用されていました。

高濃度で吸入すると人は意識を失います。

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『デルポイの巫女』(ミケランジェロ作、システィーナ礼拝堂天井画、1508-1512年)/ Credit: ja.wikipedia

では、もう少し低い濃度ではどうなるのでしょうか。

毒物学者の研究によれば、エチレンを吸った人は意識を保ちながらも精神状態が変化することがあります。

会話はできるものの、言動が奇妙になったり、興奮したり、叫び声を上げたりする場合があると報告されています。

また、ガスの効果が消えた後に、その間の記憶が曖昧になることもあります。

こうした症状は、古代の文献に記されたピュティアのトランス状態と非常によく似ています。

さらにエチレンは甘い香りを持つため、プルタルコスの記述とも一致します。

ただし、このガスを繰り返し吸うことは人体にとって危険です。

プルタルコスも、神託の役割が巫女の寿命を縮める可能性があると記しています。

実際、デルポイでは複数の女性が交代で神託を担当していたとされており、トランス状態に入ることが大きな身体的負担だったことがうかがえます。

デルポイの神託のその後

デルポイの神託は、アレクサンドロス大王の征服以降、ギリシャ世界が広大な王朝国家の支配下に入ると、都市国家中心の政治体制が変化し、神託の政治的役割は次第に弱まっていきます。

ローマ時代には巡礼地としての人気は残っていたものの、かつてのような影響力は失われていました。

プルタルコスも、神殿の活動が以前ほど盛んではなくなっていることを記録しています。

そして4世紀になると、ローマ帝国でキリスト教が広まり、異教の宗教儀式は次第に禁止されていきました。

最終的に西暦393年、皇帝テオドシウス1世の政策によってデルポイの神殿は閉鎖され、千年以上続いた神託は歴史の中で幕を下ろしています。

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