そういえば子供の頃に遊んだ「スライム」もブチッとなった

「液体を速く引っ張ると固体のように割れる」と聞いて、なんとなく既視感を覚えた方もいるかもしれません。
そこでここからは少し論文の話を離れて懐かしの「スライム」について考えています。
子供の頃に遊んだあのスライム玩具や、水に片栗粉を溶いたものをゆっくり指でつまんで引き上げると、だらーんと長く伸びていきます。
ところが同じスライムを思い切り叩いたり、勢いよく引っ張ったりすると、どうなるでしょうか。
急に硬くなって跳ね返したり、「ブチッ」と音を立てて切れたりします。実はこれ、理屈の上では今回の発見の「親戚」にあたる現象です。
科学の世界ではこうした性質を持つ液体を「ダイラタント流体」と呼びます。
ゆっくり力を加えると液体のように流れ、素早く力を加えると固体のように振る舞う――まさに今回の”折れる液体”と同じ方向を向いた現象です。
そして時間とともにスライムの水分が抜けていくと、この「ブチッ」はどんどん起きやすくなります。
遊び始めた頃は何度引っ張ってもだらりと伸びていたスライムが、翌日には触っただけで千切れるようになる、あの経験を覚えている人も多いはずです。
水分が減ると中身の分子が身動きを取りにくくなり、流れて逃げる余裕を失うので、ちょっとした引っ張りでも簡単に”折れて”しまうわけです。
またスライムで熱心に遊びすぎて、ほこりや砂粒、手の汚れなどが混じった場合もブチッとなりやすくなった経験もあるでしょう。
こちらは水分に加えて異物が折れやすさの原因になります。
これらの異物は、スライム本体の分子とは全く結びつかない「よそ者」です。
スライムから見ると、異物が混じった場所は分子同士の手のつなぎが途切れた空白地帯のようなものになります。
材料工学の言葉で言えば、異物の周りには「応力が集中する点」ができてしまうのです。
ではスライムと今回の発見は同じものなのか、というとそうではありません。
スライムはもともと分子同士の結びつきがとても強く、誰が触っても明らかに”変な液体”だとわかる特別な物質(複雑流体:complex fluid)です。
これに対して今回ドレクセル大学のチームが示したのは、そうしたスライムのような複雑流体(complex fluid)ではない普通の液体(simple liquid )であっても、十分な速さで引っ張れば同じように”折れる”瞬間がやってくる、という事実でした。
つまりこれまで「スライムのような奇妙な液体だけの特技」だと思われていた現象が、実はすべての液体に眠っているかもしれないという可能性を開いたのです。
子供の頃にスライムを引きちぎって遊んだあの感触は、もしかすると「液体の折れ」という物質の最も深い秘密への入り口だったのかもしれません。






























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