鍵は「引っ張る速さ」だった

では、なぜ液体が固体のように折れるのでしょうか。
研究チームの分析が示したのは、決め手となっていたのが引っ張る速さだった、ということでした。
液体がゆっくり引き伸ばされる場合、液体の中の分子たちは互いの位置関係を少しずつズラしながら、加えられた力を「流れる」という形でうまく逃がすことができます。
たとえばハチミツをゆっくり引っ張れば内部の分子は絶え間なく手を離しては別の新しい分子とつなぎ直す、という動きを繰り返しすことになります。
そのため引っ張る力の多くは「分子の手の繋ぎなおし」の部分、つまり「流れ」に逃がすことができ、結果としてハチミツは細く糸を引くように伸び、ゆっくりと静かに切れるのです。
ここで大事なのは、分子たちが手をつなぎ替えるのにはほんのわずかな時間がかかるという点です。
普段私たちが液体を扱うときには、その時間は一瞬すぎて気にも留まりませんが、確かに存在する時間なのです。
ところが、引っ張る速度がある一定の限界を超えると、この状況ががらりと変わります。
液体をあまりにも速く引っ張ると、分子の手の繋ぎなおしをする余裕がなくなってしまいます。
本来なら流れて逃げたいのに、そのために必要な時間が与えられないため、分子たちは元の位置に強く引き留められ、どこにも動けなくなります。
こうなると、もう引っ張る力に耐えるのは「今あるその場を動けない分子同士の手つなぎ」だけです。
この状況では、引っ張る力が分子間のつながりが耐えられる限界を超えると、すべての「つながりの糸」が一斉にブチッと切れるといった、固体にみられる「折れ」が起きても不思議ではないでしょう。
(※ただ研究者は「一斉にブチッと切れる」という部分を本当に確定させるには、その瞬間をとらえる別の調査が必要だとも述べています)
さらにこの破断の瞬間には、細くなって静かに切れるという液体の常識的な姿はどこにもなく、鋭い破裂音とともに一瞬で勝負がつきます。
そして破断面もまた液体と思えないような形状であり、金属を折った時のように「かなり綺麗な割れ跡」のものや、金属を無理矢理伸ばしたときのように「引きちぎられた」感じのものになりました。
興味深いことに、この2つの壊れ方は固体材料の世界で「脆性破壊」と「延性破壊」と呼ばれる、昔からよく知られた2つのパターンそのものです。
液体が、まるで金属の教科書をなぞるようにして壊れていたことになります。






























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