200万気圧の熱い水の中に現れた氷の正体とは?
研究チームが圧力をかけるのに使ったのは、「ダイヤモンドアンビルセル」という装置です。
向かい合わせた2つのダイヤモンドの先端で、小さな試料をはさんで押しつぶします。
ただ、ふつうの装置ではレーザーで熱すると試料に大きな温度のむらができてしまい、測定が難しくなっていました。
研究を率いたのは、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のアレクシス・フォレスティエ氏とグンナー・ヴェック氏です。
チームは、ダイヤモンドの先にカップ形の円盤を2枚加えました。この円盤はホウ素を添加したダイヤモンドでできていて、熱をよく伝えるものです。

試料は、不純物をほぼ取り除いた水(超純水)で、大きさは12μm(0.012mm)ほどです。
この工夫で、試料をむらなく熱しながら押しつぶせるようになりました。
チームは、およそ79万〜226万気圧の範囲で水を押しつぶしました。
同時に、室温ほどの約27℃から、約2360℃まで温度を上げていきました。
観察には、フランス・グルノーブルにある欧州の放射光施設(強いX線などの光を生み出す大型の施設)で、1μmより細いX線のビームを使いました。
結晶にX線を当てると、原子の並び方に応じた模様が現れます(X線回折)。
試料が小さくても、細いビームのおかげで鮮明な模様が得られたといいます。
その模様から、これまで実験で確かめられていなかった並び方の超イオン氷が見つかりました。
新しい氷の並び方は、酸素の原子をボールに見立てると、すき間なく積み重ねる並べ方の1つ(六方最密充填:ろっぽうさいみつじゅうてん)です。
すでに見つかっていた超イオン氷の1つも、同じくすき間なく積む形(面心立方:めんしんりっぽう)をしています。
2つの違いは、主にボールの層をどの位置に重ねていくかです。
新しい氷はまず、約160万〜200万気圧、約1530℃以上の範囲で、面心立方の氷と並んで現れました。
観測結果は、この圧力の幅のなかで、新しい氷のほうが面心立方の氷より安定になっていくという考えと合っていました。
その移り変わりは、原子が一斉に少しずつずれて並びが切り替わる型(マルテンサイト変態)とみられます。
さらに約200万気圧、約1530℃を超えると、新しい氷が主役になりました。
このとき氷は、温度を上げたときの膨らみ方に、ふつうとは違う変化を見せています。
結晶は、ほぼ一方向にだけ伸びる形で膨らんでいたのです。
それが、水素が流れ出す超イオンの状態に入った証拠とされています。
新しい氷は、冷やしていくときにも姿を見せました。
面心立方の氷は温度が下がると、サイコロの角と中心に原子を置いたような並び方(体心立方:たいしんりっぽう)に戻ります。
その途中で、面心立方の層の重なり方が乱れ、そこから新しい氷が生まれていたのです。
面心立方の氷も新しい氷も、高い圧力をかけたまま室温まで冷やしても残りました。
体心立方の超イオン氷は2016年に初めて観測されており、今回の氷で超イオン氷は3種類になりました。




