カタツムリの殻が「右巻きか左巻きか」を決める遺伝子を発見
カタツムリの殻が「右巻きか左巻きか」を決める遺伝子を発見 / 左巻きの殻を持つカタツムリです。マイマイ属とは別の仲間の種で、今回の研究で調べたカタツムリではありません。 Credit: Jxd / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、16:9 に切り抜いて表示)
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カタツムリの殻が「右巻きか左巻きか」を決める遺伝子を発見 (2/3)

2026.10.23 07:30:00 Friday

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殻の向きを決めていたのは何だったのか?

チームはこれまでに岩手と山形、今回新たに福島で、右巻きと左巻きが接しているかもしれない場所を見つけていました。

決め手になったのは、4か所目に見つかった新潟県の山奥の谷でした。

ここでは右巻きと左巻きが広い範囲で一緒に暮らし、殻の見た目もよく似ていました。

論文の図1の一部で、新潟県の谷にすむ右巻きと左巻きのカタツムリです。
論文の図1の一部で、新潟県の谷にすむ右巻きと左巻きのカタツムリです。Credit: Lewis et al., Current Biology (2026)(CC BY 4.0、図1の一部を切り出し)

実際に、右巻きと左巻きが交尾する様子も、少なくとも時々は観察されています。

論文の図1の一部で、右巻き(dex)と左巻き(sin)のカタツムリが交尾しているところです。
論文の図1の一部で、右巻き(dex)と左巻き(sin)のカタツムリが交尾しているところです。Credit: Lewis et al., Current Biology (2026)(CC BY 4.0、図1の一部を切り出し)

もう1つの鍵は、子の巻く向きが母親の遺伝子で決まるという性質です。

研究室で新潟の母親に卵を産ませると、1回に生まれる子はみな同じ向きでした。

その中には、母親とは逆向きの子がまとめて生まれた例もありました。

母親が1回に産んだ子の、殻の巻く向きを表した図です。子の向きはすべてそろっていて、母親の殻とは逆向きになることもあります(形は本当の通りではありません)。
母親が1回に産んだ子の、殻の巻く向きを表した図です。子の向きはすべてそろっていて、母親の殻とは逆向きになることもあります(形は本当の通りではありません)。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

つまり、殻の見た目の向きと、その個体が持つ遺伝子の型が食い違うことがあるのです。

向きの違いは、受精卵が3回目の分裂をするころの細胞のねじれに、すでに表れていました。

交尾とこの食い違いのおかげで、この場所では今も右巻きと左巻きの間で遺伝子が混ざり合っていると考えられます。

論文の図1で、左巻きと右巻きのカタツムリの間での遺伝子の行き来を表しています。
論文の図1で、左巻きと右巻きのカタツムリの間での遺伝子の行き来を表しています。Credit: Lewis et al., Current Biology (2026)(CC BY 4.0)

そこでチームは両方の型の遺伝子を詳しく比べ、巻く向きと結びつく遺伝子を探しました。

その結果、浮かび上がったのは「ミオシン」というタンパク質を作る遺伝子の違いでした。

ミオシンは、ほかのタンパク質と組んで細胞の骨組みをつくり、細胞が動いたり形を変えたりするのを助けます。

見つかったのは、その中でも少し変わった種類(ミオシンIa/b)でした。

この種類が左右の決定に関わることは、これまでどの動物でも知られていませんでした。

では、右巻きと左巻きでは、受精卵の中で何がどれほど違うのでしょうか。

チームは、まだ1個の細胞の段階の受精卵を1つずつ調べ、どの遺伝子がどれだけ働いているかを比べました。

このカタツムリで、右巻きと左巻きの間で働きが違った遺伝子は、2万6839個のうち22個だけでした。

受精卵の中で、右巻きと左巻きで働きが違った遺伝子の割合を、2種類の貝で比べた図です。マイマイ属では0.08%、モノアラガイでは17%でした。
受精卵の中で、右巻きと左巻きで働きが違った遺伝子の割合を、2種類の貝で比べた図です。マイマイ属では0.08%、モノアラガイでは17%でした。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図2(Lewis et al., Current Biology (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)

割合にすると0.08%で、1万個のうち8個ほどです。

ミオシン遺伝子そのものの働く量にも、違いは見られませんでした。

同じ調べ方をモノアラガイで行うと、結果は大きく違いました。

モノアラガイの左巻きは、「フォルミン」という別の遺伝子の読み取りがずれる変異で起こります。

その左巻きと右巻きの受精卵では、3,005個の遺伝子の働きが違っていました。

これは全体の17%で、およそ6個に1個にあたります。

つまりマイマイ属では、左右の向きが変わっても、受精卵の中で働く遺伝子の顔ぶれはほとんど変わらないのです。

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