・他の鳥類と異なり、オウムは賢く、極端に長生きできるなどの特徴を持っている
・そうした存在となるまでに、オウムは進化の過程で遺伝子に様々な変化を起こしてきたが、その軌跡が人間のものと酷似していることが分かった
・さらに詳細についての研究が進めば、収斂進化についての理解が深まる可能性がある
一般的にオウムは知性が高く、長生きをすることで知られています。しかし、一体どうしてオウムには、このような他の鳥類に見られない特徴があるのでしょうか?
そのことを疑問に思ったオレゴン・ヘルス & サイエンス大学の神経科学者、クラウディオ・メロ博士らの研究チームが、ブラジルのアオボウシインコのゲノムを調査した結果、オウムがまるで鳥の世界における「人間」のような進化をみせていることが明らかとなりました。
Parrot Genomes and the Evolution of Heightened Longevity and Cognition
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)31417-9?
研究チームは、アオボウシインコや他の長生きをする鳥類が、寿命に関係していると考えられる「遺伝子の変化」を共有していることを発見しました。それはたとえば、がん細胞に対処したり、細胞の成長を適切にコントロールするための変化などを指します。
研究では「オウム」と「人間」といった全く異なる2つの動物が、その進化の過程で同じような問題解決をしてきたことが強調されています。オウムは自身の遺伝子を変化させたことで長い寿命を得ましたが、研究チームはその変化について人間が他の霊長類から抜きん出た存在となるための変化と酷似していることを指摘しているのです。
また、オウムが他の鳥類と異なる点はその寿命の長さだけではありません。大きな脳を持ち、秀でた認知能力を兼ね備えている点でもオウムは特別な存在であり、それは同時に人間との共通項であるといったこともいえます。
興味深いのは、人間とオウムにおけるその「変化」の類似点は、遺伝子そのものの変化を指しているわけではなく、脳の発達や知性に関係していると考えられる遺伝子の発現を調整するゲノムの付近で起こっているものであるということです。
今後、研究がされていく中で、収斂進化についての深い理解が得られるようになるかもしれません。つまり、ひょっとすると動物にとって複雑な脳の構造や高度な認知能力を持つための「道」は、一つしか存在していないかもしれないということです。