・空中でアームを自由に可動させて狭い隙間や穴を通過できるドローンが開発
・ドローンはアームで小さな物をつかむことができ、閉じ込められた遭難者に物資を届けることが可能
・ドローンに内蔵された自動探知システムにより、空間状態を把握することで、安定したプロペラ飛行ができる
地震などで倒壊したビルや屋内に閉じ込められてしまうと、食料調達や救助活動はきわめて困難です。地震大国の日本では、この問題は大きな懸念事項となっています。
しかし、この問題を一挙に解決するスーパードローンが誕生しました。
チューリッヒ大学とEPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のロボット工学合同研究チームが制作した最新型ドローンは、空中で自由自在に形を変形させ、狭い隙間や小さな穴を通り抜けることが可能。この機能は、災害時に屋内に閉じ込められた遭難者の発見などに活用することが期待されています。
このドローンには胴体部分を中心にして4つのアームが装備されており、それぞれのアームの先端には独立して動くプロペラ機が設置されています。これら四方に伸びているアームを折りたたんだり、引っ込めたりすることで、通路に対応した形に変形するのです。
研究チームはこのドローンのアイデアについて、狭い抜け道を通過するときに鳥が見せる両翼の動かし方にインスパイアされたと説明しています。
アームに可動機能を与えたことで、普通のドローンでは不可能な、壁のひび割れの隙間や割れている窓の穴を難なく通過。遭難者の位置探索が可能になり、救助隊の先導をスムーズにおこなうことができます。
さらにこのドローンは、水や懐中電灯、食料などの小型物資であれば持ち運ぶことが可能で、屋内に閉じ込められた遭難者にも物資を送り届けられるのです。
最新型ドローンについて、同チームの主任研究員であるチューリッヒ大学のデヴィッド・ファランガ氏は「ドローンが形を変えるという機能自体はシンプルなものですが、それだけでなく、認知制御システムを備えた多才で複雑なマシーンである」と説明しています。
ドローンは、空間を細かく認知することによって、狭く不安定な場所でもうまくバランスを取り安定したフライトを可能にします。4つのアームには、物体の位置や方位、態勢などを探知して自動で作動するサーボモータが内蔵されており、これによってそれぞれのプロペラ機を独立して機動。逐一変化するアーム位置に対応して、ドローンの重心偏移を可能にするのです。
そして、可動式ドローンには、飛行空間の変化に応じたフォーメーションがあります。1つ目がオーソドックスな「X字フォーム」で、4つのアーム間隔がもっとも広く安定した形です。2つ目が「H字フォーム」で、アームを一方向に沿って並べることで、狭い通路も問題なく通過できます。
3つ目の「O字フォーム」も、細い隙間などを通り抜ける際に使われるもので、4つのアームを胴体に接着させるようにしまい込みます。そして、4つ目の「T字フォーム」は、、胴体に内蔵されたカメラを探索する対象にできる限り近づけるために使われます。
研究チームは、ドローンをさらに進化させ、三次元方向にアームを可動させることを目標としているとのこと。そしてファランガ氏は「ドローンの認知精度を高めることで、現実の災害現場で最短で安全なルートを選択し救助活動の一助とすることが最も重要なことだ」と言います。発展の一途をたどるドローン技術が、人命救助のために応用されることこそ、人類知があるべき本来の姿だと言えるでしょう。
via: actu.epfl.ch / translated & text by くらのすけ