「聴覚」を司るのは「耳」だけではない
蜜が甘くなればなるほど、花は多くの送粉者を惹きつけ、受粉のチャンスを増やすことができます。
実際に研究者たちはフィールドワークにおいて、他の送粉者が6分以内に訪れた花には、他の花と比べて9倍以上の送粉者が好んで集まっていることを確認しています。
また、多くの花がボウルのように「凹状」に咲いているのは、音波を受け取り、増幅しやすくするためであると考えられます。
それはちょうど、テレビのアンテナが電波をキャッチしやすいように凹状になっていることと同じ原理を利用しているといえます。
その構造の効率性を確認するために、研究チームは「花びら」を1枚~数枚取り除くといったテストをおこなっています。その結果、花びらを失った花は、低周波の音をうまく反響させることができませんでした。
研究チームの一員である Marine Veits 氏は、この「花の聴覚」のメカニズムについて、より詳細な研究を進めていきたいと語っています。それはたとえば、どのような分子や機械的なプロセスがそこに作用しているのか、などといったものです。
Veits 氏は、「どうやって植物が『聞く』ことや『匂う』ことができるの?と思う人もいるでしょう。そんな人々に、『聞く』という行為は『耳』によってのみ行われるわけではないことを知ってほしいと考えています」と語っています。
彼女はこの研究が、「世界の認識は、トラディショナルな感覚器官によってのみ行われる行為ではないことを証明する研究になってほしい」と願っているのです。
この記事は2019年1月に公開されたものを再編集しお送りしています。