■外部から完全に遮断された「孤独」状態は、精神を弱らせるとともに、身体の免疫システムを低下させ、病気発症率を高める
■「孤独」状態がもっとも増長するのは、独房監禁といった身体的に外部世界から隔絶されたときである
■また、「暗闇」も大きな一因で、太陽光の遮断により、バイオリズムが狂いはじめ、幻覚症状などを引き起こす
外の世界から完全にシャットアウトされた真っ暗な小部屋の中、たった一人で1ヶ月間を過ごしたら大金をゲット――。この挑戦、あなたならやりますか?
プロのポーカープレイヤーのリチャード・アラーチ氏は、10万ドル(およそ1100万円)を賭けてこの挑戦に挑みました。
条件は、ベッドと冷蔵庫、バスルーム以外は何もない真っ暗な小部屋で30日間生活すること。一見誰もが「楽勝だ」と感じることでしょう。しかし、20日が経過した後、アラーチ氏は早くもギブアップを宣告します。そして逆に6万2400ドル(およそ685万円)を支払って、許してもらったそうです。
専門家によると、こうした「絶対の孤独」状態が心身に与えるダメージは甚大で、ギャンブラーで鍛え抜かれた精神力を持つアラーチ氏も例外ではなかったようです。アラーチ氏の詳細なインタビューは、昨年12月18日付けで「The Action Network」上に掲載されています。
https://www.actionnetwork.com/poker/rich-alati-poker-player-solitary-confinement-bet-exclusive-interview-darren-rovell
「身体的隔絶」と「暗闇」がもたらす恐怖
社会的動物である人間にとって、「孤独」でいることはもっとも難しいタスクのひとつです。「孤独」がダメージを与えるのは、特にメンタル面。精神的に他者から隔絶された人は、話し相手のいないことで、ストレス過多の状況に対処することができなくなります。それにより、心はうつ状態に追い込まれて、情報処理能力も低下、さらに判断力や記憶力も大幅に落ち込みむのです。
そして、「孤独」の影響力がもっとも増すのは、身体的に外部世界と隔絶されたときです。例えば独房監禁は、囚人の内に不安症やパニック症状、パラノイアを引き起こす原因となっており、社会的に問題視されています。また、身体的隔絶は、体内の免疫システムを弱体化させ、病気の発症率を高める原因でもあるのです。
それから「暗闇」という条件も、孤独感の増加に大きく寄与しています。太陽光が遮断されると、体内のバイオリズムが崩壊し、睡眠サイクルが狂い出します。これは、覚醒状態を促す体内中の「メラトニン」の減少とリズムのブレを調整する「視交叉上核( 脳の視床下部にある小さな部位)」の機能停止が主な原因です。