■大気中の二酸化炭素を、自然の葉っぱの少なくとも10倍は効果的に燃料に転換する最先端の人工葉が開発された
■従来の人工葉を第4級アンモニウム型樹脂製のカプセルで包み、中を水で満たすことで、実験室外で利用可能に
■内部には、二酸化炭素を一酸化炭素に変える触媒でコーティングされた光吸収体から成る人工光合成装置を配置
植物が太陽エネルギーを使って、水と大気中の二酸化炭素から糖を生み出す「光合成」。その仕組みを巧みに真似するのが人工的に作られた葉っぱ「人工葉」です。
ですが、いくら人工葉とはいえ、光合成ができるのは実験室の中だけ。快適な実験室の中では、混じり気のない綺麗な加圧二酸化炭素を思う存分吸うことができるからです。
人工葉を、そんな心地よい環境から、外の世界へ連れ出そうとする試みが行われています。米イリノイ大学の研究チームが、大気中の二酸化炭素を、自然の葉っぱの少なくとも10倍は効果的に燃料に転換する最先端の人工葉を開発しました。論文は、雑誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載されています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.8b04969
現実の世界で人工葉を実用化するためには、二酸化炭素濃度の低い大気や工場の煙の中から、二酸化炭素を引き出して集め、濃縮する能力を与える必要があります。
この難題に取り組むため、研究チームは、従来の人工葉を第4級アンモニウム型樹脂製の膜でできた透明なカプセルで包み、その中を水で満たす方法を思いつきました。日光で温められた中の水は膜を通って蒸発しますが、その際に大気中の二酸化炭素を選択的に中へ引き込む役割を果たします。
カプセル内部には、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する触媒でコーティングされた光吸収体から成る人工光合成装置があります。この装置は、二酸化炭素を吸い上げる役割や、さまざまな合成燃料を製造する土台としての役割を担います。もちろん酸素も作られますが、こちらは収集することも、外部に放出することも可能です。
もともと存在した人工葉をカプセルに閉じ込めるだけで、自然界の葉っぱのように大気中で機能させることができるようになるとは、シンプルながらも画期的なアプローチです。
幅20センチメートル、長さ1.7メートルの巨大な人工葉。研究チームの試算によると、360枚の人工葉が一日に生産する一酸化炭素は0.5トン近くになるそうです。一酸化炭素は、合成燃料を作るための基剤として活用可能です。また、500平方メートルの面積に360枚の人工葉を設置すれば、その場所の大気中に含まれる二酸化炭素レベルを一日あたり10パーセントも下げることができるそう。
しかも、この人工葉が優れている点は、すでに手に入れることができる材料と技術を用いているところです。既存の要素を上手く組み合わせたことで、自然環境の中でたくましく働けるよう見事な進化を遂げました。温室効果ガスを削減するうえで、人工葉が果たす役割は重要なものになりそうです。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/2611