150年にわたる議論にピリオド
stylophoransは、胴体とそこから伸びる2つの付属肢からなる生物で、そのどちらもおよそ1.2インチ(約3センチメートル)と小さなものです。そしてこの謎の生き物について、研究者らはこれまで様々な議論を交わしてきました。
1850年代から1950年代にかけて、多くの研究者はstylophoransは「一般的な」棘皮動物であると考えていました。奇妙な2つの付属肢についても、それらはウミユリの支持体に相当する部分だと思われていたのです。
1960年代の初頭、ベルギー人古生物学者のジョージズ・ユバフス氏は、stylophoransの付属肢が、支持体とは異なるものであり、むしろ現代のヒトデが持つ触手に似たものであることに気がつきました。
1960年台後半には、イギリスの古生物学者リチャード・ジェフェリーズ氏が、まったく新しい説を提唱します。彼は、stylophoransのメインの胴体が咽頭と脳を含む「頭」であり、付属肢には筋肉と脊索(背骨のようなもの)が含まれていたと考えたのです。ジェフェリーズ氏は、stylophoransこそが棘皮動物と脊索動物(脊椎動物を含む)をつなぐ「ミッシングリンク」であるとする説を提唱したのです。
2000年代に入ると、イギリス人古生物学者アンドリュー・スミスがさらに別の解釈を示します。彼は、おそらくstylophoransは棘皮動物と脊索動物をつなぐ「ミッシングリンク」ではなく、腸鰓類と棘皮動物との間のギャップを埋める、原始の後口動物であるとの考えを提唱しました。
そして今回発見された化石が、こうした議論の行方を大きく変化させます。すなわち、化石化された柔らかな器官の発見により、初めてその器官がどのシナリオにマッチするのかをテストすることができたのです。
結果として新たな化石は、ユバフス氏の解釈が最も整合性が保てることを示しました。stylophoransの平らな体の中には腸が含まれており、付属肢は支持体に近いものというよりは、ヒトデの触手に近い見た目であることが分かったのです。
ルフェーヴル氏は、「この発見は、奇妙な見た目の化石の生き物がどこに属するのかといったことに関する、150年にわたる議論に終止符を打つ非常に重用なものです」と語っています。