アジア生まれの両生類は平気だけど…抵抗性のない両生類にとっては悲劇
ツボカビ症による両生類の減少が見られた地域は、ヨーロッパ・アフリカ・中南米・オーストラリア。一方で、アジアでは同じ現象が見られませんでした。これは、アジアに生息する両生類が、同じくアジア生まれのツボカビに対する抵抗性をもともと持っているからです。
とりわけ状況が深刻なのは、中南米とオーストラリア東部でした。ツボカビは気温28℃を越えると死滅するため、涼しく湿った環境を好みます。

特に、生物多様性を誇るオーストラリアでは、この窮境を切実に捉えています。オーストラリアに生息する240種の両生類のうち、40種はツボカビ症の影響で生息数が減少しているものは40種。うち7種は絶滅が予測されています。
その中に含まれるmistfrogは、オーストラリア政府によって絶滅危惧種に追加されました。また、southern corroboree frog、northern corroboree frogについては、絶滅防止を目的とした大規模な飼育下繁殖が行われているところです。
パンデミックさながらの危機に直面するカエルたち…。世界から大量の両生類が姿を消すことでもたらされる環境への影響は計り知れません。ツボカビのさらなる拡散や、新型の出現を阻止するための取り組みが、国際社会に求められています。
バイオセキュリティの概念を考える時、私たちは病気からどうやって「人」や「家畜」を守るかということにばかり焦点を当てがちです。ですが、本来は「生き物」すべてを含むかたちでの保護が目指されるべきであるはず。人間の活動が招いたこの大惨事を真剣に受け止めて対策を講じることは、両生類だけではなく、回りまわって私たち人間自身を救うことにもなるでしょう。