
■新しいスキルを効率よく習得するには、練習中に「小休憩を取る」ことが効果的であると判明
■実験では、長い休憩(睡眠学習)よりも、短い休憩中に起こるスキル向上度の方が高かった
■記憶の定着にかかわる「ベータ波」は、練習中ではなく休憩中にのみ発生することが明らかに
練習してちょっと休憩、これを繰り返すのが上達のコツみたいですよ!
スキルを習得するときの「猛特訓あるのみ」との思い込みはどうやら間違いのようです。実は、スキルの進歩や記憶の定着は短い休憩の最中で起こっているらしいのです。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)は「スキル習得には、学習中こまめに小休憩を挟むことが重要な役割を果たす」ことを明らかにしました。研究の詳細は、3月28日付けで「Current Biology」に掲載されています。
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)30219-2?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982219302192%3Fshowall%3Dtrue
スキルの向上は「休憩中」に起こる?
NIH研究チームのMarlene Bönstrup氏は当初「スキルや記憶の定着には睡眠学習のように長い間をもうけることが効果的」だと考えていたそう。ところが被験者にある実験を行い、その際に生じた脳波の変化を測定したところ、当初の考えとは異なる結論に至ったといいます。
具体的な実験として、心身ともに健康な「右利き」の被験者を集めてテストを行い、「脳磁図(MEG)」測定法を使って脳波の変化を記録しました。被験者はコンピュータスクリーンに映し出される一連の数字を「左手」で10秒間タイピングするよう指示されます。終わったら10秒間の休憩をはさみ、また繰り返し10秒間のタイピング。これを35セット行いました。

するとタイピングの正確性やスピードは最初の数回の中で急激に向上し、11セットを越えるあたりから記録は横ばいになっていきました。その際の脳波の変化を見てみると、実に興味深いことが見つかったのです。
Bönstrup氏は「被験者の脳波変化は、タイピング中よりも小休憩の間により大きく変化していることに気づいた」と指摘します。この事実から、「脳内でスキル学習が行われるのは、練習中ではなく小休憩しているときなのではないか」との考えにたどり着いたのです。