休憩中だけ生じる「ベータ波」
また実験結果を詳しく分析する中で、2つの重要な事実が明らかになりました。
ひとつは「被験者のパフォーマンスはタイピング中ではなく休憩中に向上している」ということです。さらに、被験者に対して翌日にも同様のテストを行いました。その結果、睡眠学習を経ているにもかかわらず、前日のスキル向上度の方が高かったことが判明したのです。これは練習後すぐの小休憩がきわめて効果的であることを証明しています。
もうひとつは「小休憩の間に、被験者が記憶を強化・定着させている脳波パターンが発見された」ということです。とくに、記憶定着に大きくかかわる「ベータ波」という脳波変化が、右脳内にある前頭葉と頭頂葉を結ぶ神経ネットワークに沿って起こっていました。しかもベータ波は小休憩中にのみ発生していたのです。

この結果を受け、研究主任のLeonardo Cohen氏は「小休憩を取り入れることで、失ったスキルを取り戻そうとする患者のリハビリ治療、あるいは健全な方でもピアノ技術などの向上に効果が見られるかもしれない」と期待を寄せています。
「練習してちょっと休憩」を繰り返すこの方法は実生活でもおおいに役立ちそうです。私たちの記憶は、適度なクールダウンを繰り返すことで、スポンジのような吸収力を発揮するのかもしれません。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/16224