実現可能性には疑問の声も

この方法を提案したレスリー・フィールド氏は、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の報告を参照しながら、次のように発言している。「地球を熱から守るシールドの95%は失われてしまいました。これは自然のプロセスに任せて元通りになるものではありません。人為的な策を用いて氷の融解を遅らせられれば、北極の氷を取り戻すことができます」
しかし、このアイデアの実現性に疑問を呈する研究者もいる。アラスカ大学フェアバンクス校の海洋学者セス・ダニエルソン氏は、「Ice911がやろうとしていることは素晴らしいのですが、よく練られた理論と実際の実施方法との間に隔たりを感じます」と述べている。
氷が存在している場所は風が強いため、ダニエルソン氏はそうした場所で上手にビーズを撒き散らすことは不可能であると考えているのだ。また、作戦実行の際に用いる船が排出する大量の温室効果ガスにより、かえって地球温暖化が進行してしまうとの指摘もある。
フィールド氏は、こうした専門家からの意見を参考にしており、彼らをチームに加えようとも画策している。そして、2022年までにこの計画を実行に移すつもりだ。
解決すべき問題は多く、実現に向けた道のりは長いかもしれない。しかし、気候変動が世界中の誰にとっても身近な問題である以上、成功したときのインパクトは絶大だ。彼女が率いるチームのこれからの動向に期待しよう。