Point
■2015年に、冥王星で氷地殻の下に海があることが発見されていた
■極寒の地で海が凍らない理由として、氷と海の間にガスハイドレート層が存在することを示唆
■ガス層により断熱・保熱が可能となって海と氷の共存が可能になり、また冥王星に窒素が多い理由も説明できた
冥王星の凍った地表の下には海がある。
しかしギンギンに冷えた極寒の冥王星で、なぜ海が凍らないのかという疑問が上がっていた。
ところが今回、北海道大学・カリフォルニア大学・神戸大学などの共同研究によって、「氷でできた地殻」と「地下にある海」との間にガスハイドレートなるメタンガス層が存在すると示唆された。
シミュレーションによって、ガス層による断熱および保熱のおかげで、氷と海が共存可能になると証明されたのだ。
研究の詳細は、5月20日付けで「Nature Geoscience」上に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41561-019-0369-8
保熱・断熱を可能にする「ガスハイドレート層」
冥王星は太陽系の端っこにある準惑星で、地表温度はマイナス220度にも達する極寒の地だ。
2015年に冥王星を訪れたNASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が内部海を発見したのは、現在「スプートニク・プラニシア」と名付けられている赤道付近の場所である。
スプートニク・プラニシアは窒素氷河に覆われた巨大盆地になっており、その形から「白いハート」と呼ばれている。大気に窒素が豊富に含まれているのも冥王星の大きな特徴である。
この「白いハート」の下にあるので「内部海」なのだが、専門家によるとこれは「おかしな現象」だという。
というのも、液状の海が存在可能な温度を考慮すると表面の氷は絶対に溶ける。反対に、冥王星ほどの極低温なら内部海は必ず凍りつくはずである。そこで研究チームは保温・断熱を可能にする「ガスハイドレート層」の存在を仮説として立ててみた。
「ガスハイドレート層」を含む冥王星の内部構造がこれだ。
「ガスハイドレート(包接水和物)」は、水分子から成る格子状の「かご」の中に、ガスのような気体分子を閉じ込めた氷の層を指す。これによって断熱と保熱を同時に行うことが出来るという仕組みだ。
研究チームはこの仮説をもとに、冥王星の誕生および形成のシミュレーションを行なった。