Point
■地球からおよそ1万光年離れたカシオペア座の中に、死から復活した星を発見
■この星は寿命を終えた2つの「白色矮星」が奇跡的にぶつかって形成されたと考えられている
■星は太陽のおよそ4万倍の輝度を誇っており、さらに毎秒1万6千kmの恒星風を放っている
冥界から蘇りし恒星だ。
ドイツ・ボン大学の研究チームは、先日、地球からおよそ1万光年離れたカシオペア座の中に奇妙な星を発見したと発表した。
その恒星は「J005311」と命名され、太陽の約4万倍の輝度を誇り、毎秒1万6千kmで恒星風を放っていることが分かっている。
そして今回詳しい調査をしたところ、J005311はなんと寿命を終えた恒星同士がくっついて蘇ったものだと判明した。
研究主任のGötz Gräfener教授も「極めてめずらしい現象です」と驚きを隠せない様子だ。
研究の詳細は、5月20日付けで「Nature」上に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1216-1
「光らない!?」奇妙な星雲がヒントに
「J005311」が発見された場所は実に奇妙な「惑星状星雲」の中であったという。
なぜ奇妙なのかというと、この星雲が放つ光はほぼ赤外線のみであり、目に見える光はまったく発していなかったのだ。さらにスペクトル分析によれば、水素やヘリウムも含まれていないのだという。
星雲の性質を考えるとこれは実にヘンな現象である。どれほどヘンなのかを理解するには星の一生について簡単に触れておかなければならない。
まず、星の原型(原始星)が徐々に収縮して中心の温度が上がると、水素をヘリウムへと変換する核融合反応が起こり始める。こうして誕生するのが現役バリバリの「主系列星」である。主系列星の核融合は中心部の水素がなくなり、ヘリウムの核が出来上がるまで続く。
するとヘリウム核の表面で水素の核融合が生じて質量が増加する。増加のプロセスで星は膨張し赤色巨星となる。次に赤色巨星の表面からガスが宇宙空間に放出され始める。
このガスの集まりこそが惑星状星雲の正体なのだ。そして星雲はガスを放出して残った星が発する紫外線が当たることで光を放つようになる。つまり星雲は一般的に光を発するものであり、水素を含むはずなのだ。
その後、残された星は収縮してエネルギーを失って寿命を終える。こうして出来るのが「白色矮星」だ。この状態になると星は水素やヘリウムを持っておらず、炭素や酸素の核となる。
今回発見されたJ005311は2つの白色矮星がぶつかって形成されたものだと判明していたようだ。