死後半世紀を経て公式に謝罪を受ける
社会への多大な貢献とは裏腹に、チューリングに対する戦後の扱いは惨憺たるものだった。
先述したようにチューリングは同性愛で有罪判決となり、化学的な去勢を受けた。検死の結果、原因は青酸中毒で、側のベッドには食べかけのリンゴが落ちていたという。
知人の話によれば、映画『白雪姫』を観た直後に「魔法の秘薬にリンゴを浸けよう、永遠なる眠りがしみこむように」とチューリングが口にしたという。しかし、リンゴに毒が塗られていたかどうかは分かっていない。
その後、チューリングに対する政府の不当な扱いに対して、英のコンピューター科学者であるジョン・グラハム・カミング氏が2009年に抗議活動を始める。当時カミング氏は「チューリングは国の宝であったにも関わらず、国が彼を死に追いやった」と話している。
結果、政府は抗議を受け入れ、2013年に公式に謝罪が発表された。チューリングの死後からおよそ60年経った後のことだった。
時代は変わる。同性愛は犯罪ではなくなったものの、偏見は残った。しかし今では同性婚を認める地域や、偏見を失くそうという声もあがっている。着々と時代は流れているのだ。