Point
■重力計算を行う理論には、現在アインシュタインの空間の歪みから導くものと、ニュートンの星の軌道運動から導くものがある
■自己重力レンズ連星 「KOI-3278」の白色矮星の質量をこの2つの方法で計算したところ、計測誤差の予測範囲内である5.2%の差に収まった
■この成果を利用すれば、白色矮星の質量を恒星進化論モデルの仮定に頼らずに、直接計算することが可能になる
りんごの例え話で有名なニュートンの万有引力の法則。古いといえども、アインシュタイン登場以後も変わらずその地位を保ち続けている優れた理論です。
アインシュタインの相対性理論は、重力の原因が空間の歪みであることを示し、遠い天体の質量についても重力レンズ効果を利用して計算できるようにしました。
一方、ニュートンの万有引力の法則は特に重力の原因にはこだわりません。ただ、経験的な重力の影響について定式化したものです。しかし、この理論はかなり正確に重力の近似値を導き出すことができ、よほど緻密な値を求めるのでなければ、今でも利用されることがあります。
そんなニュートンの古典的な力学理論に従って、重力レンズ現象を起こす白色矮星の質量計算を行った研究が発表されました。
この白色矮星は、重力レンズ効果によってアインシュタインの理論では質量が計算されていましたが、今回のニュートンの理論による計算でも、5.2%内の誤差で質量を計算することができたというのです。
これまでの白色矮星の質量計算には、通常その星がどのように形成されたかという進化モデルを考慮する必要がありました。
しかし、ニュートンの理論による質量計算は、恒星進化モデルを考慮せず、直接星の重さを計算することができるのです。
この研究結果は、米国の複数の大学の研究者たちにより、7月22日付けでアストロフィジカルジャーナルに掲載されています。
The Mass of the White Dwarf Companion in the Self-lensing Binary KOI-3278: Einstein versus Newton
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab2649/pdf
死んだ星 白色矮星
太陽のような恒星は、核融合を燃料として輝いています。
よく聞く恒星の最後は、核融合できなくなり自重に押し潰されて超新星爆発を起こした後、中性子星かブラックホールになるというものですが、それは非常に重たい星の辿る運命です。
宇宙に存在する97%ほどの星は、白色矮星となってその生涯を終えることになるといわれています。
白色矮星は、太陽と同程度の軽い恒星の最後の姿です。軽い恒星は中心核の水素をあらかたヘリウムへ変え、それより重い元素の核融合反応をはじめると、それにより生じるエネルギーの膨張圧力を重力が支えきれなくなります。
結果、核融合に必要な物質をガスとして外へ放出し続ける事になってしまうのです。こうなると、最後は核融合に使える燃料がなくなってしまい、丸裸になった核だけが残る状態になります。
この核は、これまで燃え続けた余熱により青白く輝きます。これが白色矮星です。
白色矮星は地球と同程度のサイズで、太陽の0.6倍もの質量を持つといわれています。とても高密度で重い天体なのです。
また余熱で光るといっても、その輝きは何10億年も失われないほど強力です。