Point
■2つの白色矮星が共通の重心を回る食連星と呼ばれるタイプの連星で、高速軌道を回るものが発見された
■この連星の軌道周期は約7分間で、これまで発見された同タイプの連星の中では2番目に公転周期が速い
■こうした連星は相対性理論により強力な重力波の波紋を生み出していると予測されており、2034年稼働予定の重力波望遠鏡LISAの観測候補になっている
空の星を眺めていると、動いているのか疑問に思うほどほとんど変化を感じません。
地球は実際、時速10万7280kmというものすごい速度で太陽軌道上を移動していますが、まず実感することは無いでしょう。
天体はどれも人間にとってはスケールが大き過ぎて、わかるような変化がほとんどないのです。
しかし白色矮星の連星には、恐ろしい高速度で軌道を周回するタイプのものが見つかっています。
これまで発見された中には、かに座HM星系の軌道周期5分21秒や、J0651連星の12分45秒など、地球なら1年間に当たる公転周期が数分単位に収まっている天体があるのです。
今回発見された「ZTF J1539 + 5027」(略称:J1539)は、軌道周期が6分54秒で、観測史上2番目に周期の速い連星です。
1番じゃないのかよ、と思うかもしれませんが、同タイプの連星を多く発見することは、こうした天体の理解や研究を深めるために、とても重要な発見となります。2番でもダメじゃないんです。
これらの天体は食連星と呼ばれるタイプで、強い重力のさざ波を生み出すと考えられています。そのため今後稼働が予定されている重力波望遠鏡LISAによる観測対象として期待が寄せられています。
この発見報告は、カルフォルニア工科大学の研究者たちにより発表され、科学誌「Nature」に7月24日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1403-0
白色矮星の食連星
天体の話題にたびたび登場する白色矮星は、太陽と同程度の軽い恒星が死んだ後の姿です。
恒星の核融合は強力な重力による圧縮が原動力です。そのため、軽い恒星では、核融合が進んで電荷の高い原子ばかりになってくると、原子同士の反発力を抑えられなくなって核融合が進まなくなります。
そして、やがて取り囲むガスも放出して失われ、丸裸になったコアだけが残ります。これが白色矮星です。
宇宙に浮かぶ恒星の半分近くは、連星というペアを作って互いに回り合っています。そのため、宇宙にはそんな死んだ恒星だけの連星が数多く存在しています。
この中でも、特に観測に重要なのが食連星と呼ばれるタイプのものです。
食連星は互いの重力が釣り合う重心を中心として、もつれ合うように公転しているために、互いに食を起こして見えるため、定期的に2回の明るさの変化を起こす連星です。
このタイプの天体は、食による変光を観測することで、軌道周期や質量計算が容易なため、天文学者には非常に重宝されています。