Point
■アメリカの物理学者が、4500年前のイースト菌を使ってパンを作る
■イースト菌は美術館に保存されていた古代エジプトの陶器から抽出したとのこと
■使用する穀物や大麦も古代エジプト人がパン作りに用いていたものと同じ種類を用意している
Xboxだけでなく、いにしえのパンも生み出してしまったようです。
Xboxの生みの親であるアメリカの物理学者シェーマス・ブラックリー氏が、8月5日自身のTwitter上で「4500年前のイースト菌でパン作りに成功した」とつぶやき話題を呼んでいます。
現代で食されている発酵型のパンが誕生したのは紀元前4500年〜3000年頃の古代エジプトでのこと。ブラックリー氏はその当時のパンを忠実に再現するため、なんとエジプトの遺跡で出土した陶器の中に保存されているイースト菌を抽出して使ったそうです。夏の自由研究にしては大人のパワーが本気すぎる…。
イースト菌抽出からパン焼成までの詳しいプロセスは、ブラックリー氏のTwitterで公開されています。
Two weeks ago, with the help of Egyptologist @drserenalove and Microbiologist @rbowman1234, I went to Boston’s MFA and @Harvard’s @peabodymuseum to attempt collecting 4,500 year old yeast from Ancient Egyptian pottery. Today, I baked with some of it… pic.twitter.com/143aKe6M3b
— Seamus Blackley (@SeamusBlackley) August 5, 2019
美術館のエジプト陶器からイースト菌摘出
古代エジプトのパンを作るにはまず、当時使われていたものと同じ大麦や穀物が必要でした。これは現代でも一部で使われているため、比較的簡単に入手できたようです。
ところが問題は古代エジプトのイースト菌を手に入れることでした。
パンに風味や膨らみを与えるイースト菌は現代のスーパーでも売られていますが、すべてバイオエンジニアリングで人工的に加工されたものです。
そうではなく、ブラックリー氏はあくまでも古代エジプトで使われていたイースト菌にこだわりました。そこで思いついたのが、美術館に保管されている古代エジプトの陶器からイースト菌を抽出するという大胆な作戦だったのです。
ブラックリー氏と研究チームは、ボストン美術館とピーボディ考古学・民族学博物館(ハーバード大学)に協力を要請し、エジプトの陶器を使用させてもらいました。
Using a nondestructive process and careful sterile technique, we believe we can actually capture dormant yeasts and bacteria from inside the ceramic pores of ancient pots. We sampled beer- and bread-making objects which had actually been in regular use in the Old Kingdom. pic.twitter.com/9FahMRjJBU
— Seamus Blackley (@SeamusBlackley) August 5, 2019
研究チームによると、粘土質の陶器に空いている小さな穴の中には無数のイースト菌が閉じ込められ、保存されているとのこと。その穴に水を注ぎ込んで外に出すことで、貴重な陶器を傷つけることなくイースト菌を抽出することに成功しています。