Point
■木星の表面にあるアンモニウム性の氷雲で史上初となる「エネルギー噴出」を観測
■木星の上層部はアンモニウム性の氷雲、その下は固体の硫化アンモニウム層、さらに下には水の層があるとされる
■エネルギー噴出は、木星内部で起こった対流により水蒸気が一気に上昇して水滴に変わり、熱を放出したことが原因
木星の表面は常に厚い雲に覆われており、写真でよく見る縞模様も雲でできています。
この雲の動きは大気流によって生じてはいるものの、雲の内側の様子が見えないため、まだ詳しいメカニズムが分かっていません。
今回、カリフォルニア大学バークレー校の天文学研究チームにより、木星の表層で起こったエネルギー噴出が史上初めて観測されました。これは雲内部のおよそ48km下付近で発生した対流により、水蒸気が一気に上昇して雲を突き破ったことが原因だと言います。
この発見が、木星大気流のメカニズムを解明する一歩となるかもしれません。
研究の詳細は、8月21日付けで「 arXiv」上に掲載されています。
https://arxiv.org/abs/1907.11820
雲内部の動きを解明か
このエネルギー噴出は、地球上で発生する雷雨を伴った嵐に似ています。小さく明るい上昇気流となって、木星の表面上に姿を現しました。
この木星表面の噴出を最初に発見したのは、オーストラリアのアマチュア天文家フィル・マイルズさん。その後、2017年1月初旬に、研究チームによって本格的な観測が開始されました。
木星の厚い雲層の下側を観測するために試用されたのは、高性能電波望遠鏡である「ALMA」やNASAの「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」です。
木星大気の大部分は水素とヘリウムで構成され、そのほかにメタン、アンモニア、硫化水素、水などが含まれています。雲層の一番上はアンモニア性の氷でできており、特徴的な茶色と白の帯を形作っています。
その下は固体の硫化アンモニウム層で、さらに深い場所(80km下)には水の層があると考えられています。
今回のエネルギー噴出は、木星の南赤道帯で観測されており、雷雨を伴う激しい嵐を発生させていました。
研究チームはその様子を詳しく観察し、アンモニアガスの動きを3Dマップで作成することで、史上初めて上部層の内側の大気流について調べることに成功しています。
研究主任のImke de Pater教授は「このエネルギー噴出は湿潤対流理論(moist convection theory)と呼ばれる仮説を裏付けるものだ」と指摘します。
この理論によると、木星内部で発生した対流が、アンモニアと水蒸気を混ぜて一気に上昇すると、水が凝縮して水滴に変わります。水は凝縮する際に熱を放出して雲を膨張させ、他の雲層を貫いて最終的に最上部にあるアンモニアの氷雲を突き破るのです。
これが今回観測されたエネルギー噴出の正体だと考えられています。
今回の観測ではまだ木星大気のほんの一部の動きしか分かっておらず、多くの謎が手付かずの状態にあります。今後の研究で木星の暗部が照らされることに期待しましょう。