友人の意思を継いだ 鳥の排泄物の分析
実はCrouch氏は本来、鳥を専門とする研究者ではありません。彼が鳥の排泄物を分析しようと考えた理由は、亡くなった友人の主張を確認するためとのこと。
友人のBob folk教授は岩の構造を研究する科学者でしたが、その旺盛な知識欲から69年に17種の鳥の排泄物を分析した論文を発表しました。そこではX線回折の結果、鳥の排泄物には尿酸は含まれていないことが指摘されていました。
しかし、71年に対抗する論文が発表され、そこでは同じX線回折による分析の結果、オウムの排泄物から尿酸の存在を証明できたと書かれていたのです。
現在の常識では「鳥の排泄物は尿酸である」とされていることからも、folk教授の研究は結局否定されたままになっていたのでしょう。
Crouch氏は、このFolk氏が生前語った説について、最新のX線分析を行えば何か違う事実を発見できるかも知れないと考え実験を実行したのです。
X線回折法とは、物質にX線を当て、物質の結晶構造を通過することで起こる回折のパターンを分析することで、物質の構成を調べる解析手法です。
この手法自体は、50年間で特に変化してはいないのですが、物質中に存在する複数の化学物質をX線が透過した際に生成される、独特の散乱パターンを分析する技術はかなり正確なものに進化していました。
そのため、かつては曖昧に分析されていた部分もより鮮明な結果を導き出せる可能性があったのです。
サンプルに利用されたのは、オースティン動物園で飼育されている鳥たちで、他には研究者Crouch氏の近所で飼われているニワトリから採取されたとのこと。彼は飛べない種なども含み、幅広い種類をカバーして分析を行いました。
その結果、尿酸と一致する回折パターンは見つかりませんでした。
鳥の排泄物から発見されたのは、尿酸アンモニウム、スツルバイト、他2種類の未知の物質だったのです。