
Point
■日光への適度な露出により、血中のビタミンD濃度が上昇し、腸内の健康が促進されることが実証される
■紫外線による光線療法は、腸内健康だけでなく、乾癬や皮膚炎のような肌のトラブルにも効果がある
腸内の健康を保ちたいなら、偏食や運動不足、寝不足はもちろん禁物。しかし日光を極端に避けることも、腸の健康を害する一因となります。
今回、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)の研究により、紫外線に当たることで、腸内微生物が活発化され、ビタミンDの生産が促進されると実証されました。
もちろん紫外線への過度の露出は日焼け・がんリスクの増加に繋がりますが、適度な露出は腸内の健康を高めるようです。
研究の詳細は、10月24日付けで「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2019.02410/full
紫外線への露出で「ビタミンD」増加
研究チームは、21人の健康な若い女性を被験者とし、冬の期間を日差し量の低いカナダで過ごしてもらいました。カナダのような高緯度地域では、紫外線の日射量が大幅に落ち込みます。
その後、被験者には、UVB(Ultraviolet B)による光線療法を受けてもらいました。UVBは、波長が280~320ナノメートルの紫外線を指し、適度な露出で腸内の微生物を活性化させる働きがあります。

被験者は、光線療法の前後数日にわたって、血液サンプルの採取と検便を行なっています。血液サンプルで血中のビタミンD濃度を、検便で腸内の微生物を測定します。
結果、被験者のほぼ全員が、光線療法を受けた後にビタミンD濃度を増加させ、腸内微生物も活発化していることが判明したのです。
同研究員のエルセ・ボスマン氏は「この結果は、光線療法が炎症性腸疾患の患者に有益であることを示している」と指摘します。
「炎症性腸疾患」とは、体内の免疫システムが異常を起こし、自らの免疫細胞が腸内を攻撃することで発症する疾患です。慢性的な腹痛や下痢、血便が主な症状となります。

しかし、光線療法によりビタミンDを豊富に生産することで、腸内の微生物を健康な状態に保てるのです。また、UVBは、乾癬(かんせん)や皮膚炎のような皮膚疾患への効果もあり、すでに光線療法を取り入れている皮膚科もあります。
白い美肌を保ちたい人も多いですが、適度に日光に当たることも大切なようです。