- JAXAの超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)がギネス世界記録に認定された
- 通常の地球観測衛星の軌道は高度600km以上だが、つばめは「軌道高度167.4km」の記録を達成した
- 超低高度軌道では、大気の影響で燃料不足や断熱材劣化などの問題が発生するがつばめはそれらを克服した
日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の超低高度試験衛星(SLATS)「つばめ」が、地球観測衛星によって達成された最低高度の世界記録を達成したとして、ギネス世界記録に公式認定されました。
通常地球観測を行う衛星の軌道高度は600km〜800kmで、300kmより低い軌道は超低高度軌道と呼ばれます。
「つばめ」は、この高度300km以下の高度を維持することに成功。最低高度では「167.4km」から衛星写真を撮影しました。
低い高度で衛星を飛ばすメリットの1つは、地上撮影の解像度を向上させられることにあります。
衛星を低軌道に維持することには、様々な困難が伴います。「つばめ」一体いかにして困難なミッションを実現させたのでしょうか?
その秘密は、JAXAの探査機「はやぶさ」にも使われているイオンエンジンにあるようです。
今回は、そんな超低軌道に人工衛星を飛ばしたJAXAの技術と、果たした意義について解説していきます。
今回のJAXA「つばめ」の達成した世界記録は、ギネス世界記録のサイト上に掲載されています。
https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/592663-lowest-altitude-earth-observation-satellite-in-orbit
どこからが宇宙なの?
素朴な疑問として、私達の暮らす地球の大気圏と宇宙の境界はどこなんだろう? と考える人は多いと思います。
これにはしっかりと決まりがあって、地上100kmが大気圏と宇宙空間の境界線(カーマン・ライン)とされています。つまり地上100kmより高い場所は宇宙なのです。
地上100km以上は大気がほとんど無くなるので宇宙なのですが、完全に大気がないわけではありません。
地球観測衛星が飛ぶ高度600〜800kmの軌道でも、地上の1兆分の1程度の微量な大気が存在します。
そのため、衛星は定期的にガスジェットを噴射して高度を維持しないと、空気抵抗によって落下してしまいます。衛星は燃料補給などできませんから、燃料の残量がそのまま衛星の寿命になります。
低高度では、さらに大気の抵抗は大きくなります。それは高度維持に必要な燃料が短期間で尽きてしまうことを意味します。つまり低高度では衛星の寿命が極端に短くなってしまうので、普通、低高度の衛星運用は行わないのです。