- およそ80万年前、インドシナ半島の東部に衝突した隕石によるクレーターがついに発見される
- 隕石衝突により生じた鉱物や地質の重力調査により、クレーターは、ラオス南部の高原の地中化に埋まっていることが判明
今から約80万年前、隕石が地球に衝突。その威力は凄まじく、爆発の衝撃で舞い上がった岩屑が地球表面の10%を覆ったと言われます。
「テクタイト」と呼ばれるこの鉱物は、隕石衝突によって生じる天然ガラスとして知られ、インドシナ半島から南極大陸の東部、インド洋から西太平洋まで及んだそうです。一方で1世紀以上にわたり、これらテクタイトを生み出した肝心のクレーター痕が見つかっていませんでした。
しかし今回、アメリカとシンガポールの共同研究により、クレーターがラオス南部のボーラウェン高原にあることが特定されています。
研究の詳細は、昨年12月30日付けで「PNAS」に掲載されました。
https://www.pnas.org/content/early/2019/12/24/1904368116
クレーターを探せ!
隕石の衝撃は、衝突場所の岩石の吹き飛ばすと同時に熱によって一気に溶かします。それらが徐々に冷えて固まることでテクタイトは形成されます。研究チームは、このテクタイトの密集エリアや地質情報を手がかりに、クレーターの位置特定を試みました。
これまでの調査によると、テクタイトは、インドシナ半島の東部に集中して見つかっていますが、それでもかなり広範囲に広がっているため、正確な位置特定は困難でした。
研究チームは、テクタイトの情報をもとに、クレーターがあると思われる場所を数カ所調べています。中には、中国南部やカンボジア北部、ラオス中部が含まれていましたが、すぐに該当しないと判断されました。
いずれの場所も、発見された岩石の年代が、中生代 (約2億5200万年前〜約6600万年前) と特定されており、隕石衝突の年代と一致しなかったのです。
しかし事態は一転し、研究チームは、ラオス南部のボーラヴェン高原にて、クレーター痕を隠しているかもしれない溶岩エリアを発見しました。現地の溶岩を調べてみると、およそ78万年前と適切な年代範囲に一致することが分かっています。
さらに、研究チームは、ボーラヴェン高原の400カ所以上において重力調査を行いました。該当箇所の重力を測定することで、地表化の詳しい地質構造を知ることができます。
その結果、周囲の火山岩よりも密度の低いポイントが発見されました。サイズを測定すると、厚さ約100m、幅約13km、長さ17kmの楕円形の形をしています。研究員によると「この場所こそ、80万年ほど前に隕石が衝突してできたクレーターだろう」と指摘します。
インドシナのクレーターは、現在に至るまで地中の中に隠れていたようです。