- 銀河中心で「ブラックホールに接近しても吸い込まれずに伸びるだけ」という特殊な天体が見つかった
- この天体はGオブジェクトと名付けられ、単なるガスでも固体の星でもない天体と考えられている
- 今回の研究は新たに発見された4つのGオブジェクトを検証し、これをブラックホールの影響で潰れた連星と推測
天の川銀河の中心にある、銀河の核となる超大質量ブラックホール「射手座A *(いてざえーすたー)」。
そこは太陽系の周辺よりも10億倍も星の密度が高い特殊な環境で、通常の宇宙では見られない特異な天体も存在しています。
射手座A *の近くで発見された奇妙な天体は、ガスの雲に見えるのにブラックホールに近づいても吸い込まれることはなく、伸びるだけで離れると元のコンパクトな形状に戻るといいます。
単純なガスであるならば、ブラックホールの重力に耐えて元の形状へ戻ることはありえません。
今回の研究では、さらに同種の天体を発見し、ブラックホールを周回する6つの天体の軌道を特定したと報告しています。
この研究はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者であるAnna Ciurlo氏を筆頭著者とする研究チームより発表され、1月15日付けで、科学雑誌『Nature』に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1883-y
変形するけど崩れない天体 Gオブジェクト
謎の天体はGオブジェクトと呼ばれています。
最初のGオブジェクトは2005年と2012年に発見され、それぞれがG1、G2と名付けられました。
この天体は、発見当初はガスの塊だろうと考えられていました。
しかし、この天体の特殊な性質は2014年、G2が射手座A *の事象の地平面から数百天文単位(太陽と地球の距離の数百倍)という距離に接近したとき、明らかとなりました。
G2はブラックホールに接近した際、非常に伸びて歪んだにも関わらず、吸い込まれて落ちることはなく、ブラックホールから離れるとまた元の円形でコンパクトな形状に戻ったのです。
単純なガスであるならば、ブラックホールに接近した際、重力に物質を奪われることは避けられません。G2の奇妙な振る舞いは、これが重力的に強い力で結合した何らかの特殊な塊であることを示しているのです。