- 非常に明るい超高輝度超新星「SN 2006gy」の原因を、初めて無矛盾で説明できる理論モデルが発表された
- 従来この現象は大質量星の爆発と考えられていたが、Ⅰa型超新星であることが明らかにされた
- この超新星は、白色矮星と恒星の合体から生じると考えられ、連星の激しい衝突を理解する鍵となる
超新星は、星がその生涯の最後に起こす大爆発で非常に明るい天文現象です。
この超新星の中でも、極端に明るい現象が超高輝度超新星と呼ばれ、通常の10倍近い明るさを持っています。それはX線撮影した場合、所属する銀河核と見分けがつかなくなるほどの明るさです。
これを通常の重力崩壊による超新星爆発として考えた場合、原因となる恒星は太陽の数百倍の質量でなくてはなりません。しかし、そんな天体は明確に観測されたことがないものでした。
新たな研究は、2006年に観測史上最大の明るさを記録した超高輝度超新星「SN 2006gy」を再解析して、この現象のメカニズムに説明が付いたと報告しています。
その報告によると、超高輝度の超新星は、白色矮星と太陽系サイズの赤色巨星の合体で起きているといいます。
この研究論文は、マックス・プランク宇宙物理研究所、京都大学、広島大学などの研究者グループより発表され、1月20日付けで科学雑誌『Science』に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/367/6476/415
超高輝度超新星の謎
2000年代以降、超新星に関する研究や観測が発展し、その結果、これまで知られていなかったタイプの新しい超新星が発見されました。
その中でも特に重要視されているのが「超高輝度超新星」と呼ばれる、通常の超新星の10倍以上の明るさを持つ超新星です。
これは放射されるエネルギー量が通常の超新星の100倍に達します。
なぜこのような飛び抜けて明るい超新星が起こるのか? それは一体どういう天体が起こしているのか? 多くの天文学者たちがその謎に興味を向けました。
超新星爆発には、大きく分けて2つのタイプが存在しています。
それは非常に重い星が重力崩壊して起こるⅡ型超新星と、白色矮星が連星から物質を奪い取って熱核爆発を起こすⅠa型超新星です。
最近良く話題にあがるベテルギウスは、もし爆発した場合、Ⅱ型超新星に分類されます。
これは超新星の放つ光のスペクトルを分析することで見分けることができます。
Ⅱ型超新星では、水素に覆われた巨星が爆発するので水素のスペクトルが強く観測されます。一方、Ⅰa型超新星では鉄や珪素のスペクトルが強く観測されるのです。
超高輝度超新星では、Ⅱ型超新星と同様の水素のスペクトルが見つかりました。
Ⅱ型超新星では、巨大化した星が放ったガスなどの周辺物質と、爆発で放出された物質がぶつかりあい、その衝撃で爆発エネルギーが光エネルギーへ変換され輝きます。
この場合、エネルギーの変換効率は10%程度と考えられています。このことから、超高輝度超新星は通常の超新星の10倍以上の爆発エネルギーを持つ、特異な現象と推測されました。