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- 手術支援ロボット「MUSA」を用いた超微細手術が、人に対して初めて試験され、成功を収める
- MUSAにより、執刀する外科医の手のブレや振動が除去され、0.3ミリの血管を安定して縫合することが可能に
支援ロボットを用いた超微細手術が、人に対して初めて実施され、成功を収めました。
超微細手術では、直径0.3〜0.8ミリメートルの血管を縫合することになります。そのため、高度な技術を持つ外科医でも、安定した手の動きと正確さが要求され、極めて難易度の高いものでした。
しかし今回、新たに開発された手術支援ロボット「MUSA」により、外科医の手のブレを除去し、より洗練された微細な動きを実現することに成功しています。
研究の詳細は、2月11日付けで「Nature Communications」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-14188-w
手術支援ロボット「MUSA」とは
「MUSA」は、オランダの医療機器製造会社の「MicroSure」によって開発された、世界初の直視下(切開した状態)マイクロサージェリー支援ロボットです。
MUSAは、外科医の手の動きの振動やブレを排除することで、ミリメートル未満で安定化させます。
この新技術は、細かな血管を縫合する手術や切断された指などの再接合、他にも術を受ける患者の生理的振戦に対して有効です。
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今回、オランダのマーストリヒト大学およびアイントホーフェン工科大学は、MUSAを用いた人への超微細手術を試験しました。
被験者は、乳がんに関連するリンパ浮腫を患う女性患者20名です。
リンパ浮腫に対しては、「LVA(リンパ管静脈吻合術)」という超微細手術が有効ですが、言うまでもなく、外科医の高度な技術と安定した手の動きが必要となっています。
研究チームは、MUSAを用いた手術、および従来のLVAの両方を実施し、術後1〜3ヵ月の患者の状態を比較評価しました。主に、患者の健康状態、血管の縫合の質、手術にかかる時間が考慮されています。
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結果、MUSAによる手術を受けた患者全員の状態は良好で、縫合状態もLVAと識別できないほど質の高いものでした。
その一方、手術時間は、LVAが平均81分だったのに対し、MUSAは現段階で平均115分もかかっていました。
しかし、研究チームは「これに関しては大きな問題ではない。外科医がMUSAの操作に慣れるにつれて、手術時間も短縮されるだろう」と話しています。