- 観測技術の向上により、遠い星系の暗い星も観測することが可能になった
- 褐色矮星と巨大ガス惑星は共通した特徴が多く、どのように区別するかが問題になっている
- 新しい研究は、この2種類の天体の軌道から形成過程の違いを判断できるという
天体観測は過去20年ほどで飛躍的に技術が向上し、星系の主星の光と軌道を回る暗い天体の光を分離することができるようになりました。
これにより1995年には、明るい星と連星をなす褐色矮星の撮影にも成功し、2008年には別の星系の惑星を撮影することにも成功しました
しかし、ここで問題になってきたのが、惑星と恒星の違いはなんなのか? ということです。
褐色矮星は、軽いために核融合を起こさない亜恒星に分類される天体ですが、惑星と恒星の両方に共通した特徴を持っています。
ある星系の外縁を回る天体を観測したとき、それが質量の大きい巨大ガス惑星なのか、それとも最低質量に近い褐色矮星なのか、どのように分類すればいいのでしょうか?
新たな研究は、これを天体の軌道から明らかにしており、それぞれの似た特徴を持つ天体が、異なる形成過程をたどっていることも明らかにしています。
この研究は、米国テキサス大学オースティン校のBrendan Bowler氏率いる研究チームより発表され、天文学の学術雑誌『The Astronomical Journal』に1月23日付けで掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ab5b11
進化する観測技術
褐色矮星は軽いために水素の核融合を起こせない暗い星です。このため「星のなりそこない」という呼び方もされます。
こうした暗い天体は、昔は見ることが難しいものでした。
しかし現在は、波面補償光学装置(AO)や近赤外線分光撮像装置 (IRCS)の進歩で確認することができるようになっています。
AOとは地上の望遠鏡で天体観測した際の、大気による光のゆらぎを補正する装置。IRCSは明るい天体と暗い天体が近距離にある場合でも、両者のスペクトルを分離してそれぞれ見ることができる装置です。
この2つの装置の組み合わせで、地上からでも非常に高解像度の観測を行うことができるのです。
褐色矮星は木星質量の13〜75倍の質量を持つ星と定義されていますが、惑星と恒星の両方に共通した特徴を持っています。
そのため遠い星系の星を観測したとき、それが木星の巨大なものなのか、褐色矮星の非常に小さいバージョンなのかは、明確に区分する術がありませんでした。