軌道から星の種類を特定する
今回の研究者Bowler氏は、こうした問題は星系のダイナミクスを研究することで明らかにできるといいます。
研究チームの考えでは、星の軌道はその星の形成や進化の鍵を握っているのです。
そこで、彼らはAOとIRCSを搭載した日本のすばる望遠鏡とケックⅡ望遠鏡を用いて集められた、主星を周回する巨大惑星や褐色矮星の撮影画像を調査しました。
調査されたのは27の星系での伴星の軌道です。しかし、こうした星系の星は主星から地球-太陽間の40倍近く離れた軌道を回っており、軌道周期は240年近くあります。
こうした伴星の褐色矮星が撮影されたデータは過去10〜2年ほどのものしかありません。
彼らは根気よく1年ごとに伴星の撮影を行いましたが、それでも軌道全体のわずか数%分のデータしか得られませんでした。
この方法では1つの星の軌道を特定するために、数100年近い時間がかかってしまいます。
今回の研究チームの功績は、全体の数%という僅かな星の位置データから、軌道全体を予測するシステムを開発したところにあります。
論文の共著者は、ケプラーの法則を用いて、測定された星の位置から、どのタイプの軌道が一致するか識別する軌道適合プログラム「Orbitize!(オービタイズ)」の作成に貢献しました。
このプログラムは、可能性のある軌道をぼんやりした雲のように形成します。データが集まり可能性が狭まるほど軌道の形状ははっきりしたものになっていきます。
これと合わせて開発されたOFTI(Orbits For The Impatient:忙しい人のための軌道)プログラムを用いることで、非常に長い周期を持つ軌道でも、短い期間で見つけることができたといいます。