- 地球で火星起源の隕石には、本来コアに沈んでいるべき親鉄性元素が多く見つかる
- 隕石の組成を考慮すると、初期の火星には巨大な惑星類似体が衝突していた可能性が高い
- 新モデルは、火星が形成が、従来の予想より長い時間がかかった可能性を示している
現在の惑星科学の問題の1つが、火星はどのように形成されたのかということです。
地球上では約6万1千個近い隕石が見つかっていますが、その内200個近くは火星から飛ばされてきた岩石と考えられています。
こうした事実は、見つかった隕石を測定した結果、宇宙空間で放射線にさらされていた時間が短いことなどから推定できます。
ここに含まれる元素の量を考えると、火星は形成初期の頃に巨大な惑星類似体と衝突しており、これが現在の火星を形成した要因になっている可能性があります。
今回の研究では、隕石中から確認できる元素の割合などから、この時の様子を推測し、平滑化粒子流体力学の衝撃シミュレーションを行って、古代の火星に何があったかを明らかにしています。
この研究は、米国テキサス州にあるサウスウエスト研究所の研究チームにより発表され、2月12日付でオープンアクセスの科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。
https://advances.sciencemag.org/content/6/7/eaay2338
火星由来の隕石に見られる元素
火星由来の隕石には、通常考えられるより非常に多くの鉄と化合物になりやすい元素が見つかっています。
こうした鉄と親和性の高い元素は、ほとんどが惑星形成の際、コアへと隔離されます。
火星隕石にこうした強親鉄性元素が見つかる原因は、火星コアの形成後に、独自のコアやマントルという構造を持った惑星類似体が、複数回初期の火星に衝突したことを示しています。
推定されるこの衝突物体の大きさは、直径1930キロメートルになると考えられています。
研究チームはこうした予測を元に、平滑化粒子流体力学に基づく衝突シミュレーションを行いました。