- 火星と木星の間の「小惑星帯」に属する天体「パラス」の高解像度画像が新たに公開される
- パラス表面には、数多くのクレーターが見られ、頻繁に小惑星との衝突を繰り返していることが分かる
マサチューセッツ工科大学により、太陽系一の「荒くれモノ」の画像が新たに公開されました。
「パラス(Pallas)」と呼ばれるその天体は、火星と木星の間に位置する「小惑星帯(アステロイドベルト)」に位置しています。
直径は約512キロに達し、直径1キロほどの小惑星が100万個以上も存在する小惑星帯の中では、ケレス、ヴェスタに次いで3番目に大きな天体です。
南米チリにある超大型望遠鏡「VLT」に搭載されたハイコントラスト撮像装置「SPHERE」により、高解像度の鮮明な画像が実現しています。
それを見ると、表面に数多くのクレーターが散見され、ゴルフボールのように変形していることが分かりました。
このことから、パラスは、他の小惑星と何度も衝突を繰り返していることが伺えます。
研究の詳細は、2月10日付けで「Nature Astronomy」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41550-019-1007-5
衝突回数が多いのはなぜ?
パラスは、1802年の発見以来、奇妙な軌道を描いて飛翔していることで有名ですが、今回の研究により、その詳しいルートが明らかにされています。
パラスが属しているのは、下の画像に見られる火星と木星の間の「小惑星帯」です。
新たに採取されたデータを分析すると、小惑星帯に属するほとんどの天体は、太陽面に対し水平か、最大でも30度以下を保っています。ところが、パルスは、太陽面に対し、34.837°も傾いていることが判明しました。
つまり、パルスは、小惑星帯のメインルートを大きく逸れて、斜め方向に飛翔しているのです。
小惑星帯に属する天体は、どれも似た軌道を描くため、互いにぶつかることもそう多くはありません。しかし、パラスは、軌道が大幅に傾いていることで、2つのポイント(小惑星帯を横断する2地点)でメインルートにぶつかるのです。
研究主任のマイケル・マーセット氏は「そのせいで、小惑星帯を飛ぶ他の天体とぶつかり、表面に数多くのクレーターが残る」と指摘します。
さらに、小惑星同士がぶつかると、その衝撃により飛翔スピードが落ちるのですが、パラスは、その巨大さのおかげで失速することがありません。
例えるなら、高速道路を走るトラックに石つぶてをぶつけるようなものです。
これが、数十億年にわたり続けられたことで、現在のようなゴルフボール状に変化したと考えられます。
画像分析によると、パラス表面には、直径30キロ以上のクレーターが少なくとも36個あり、中には、幅40キロ級の小惑星とぶつかってできたとされる、直径およそ400キロのクレーターも赤道付近に発見されました。
サイズこそ、ケレスやヴェスタに劣るものの、天体との衝突回数で言えば、それらの3倍以上に達するそうです。
まさに、「太陽系一の荒くれモノ」と呼ぶにふさわしいでしょう。