- 天井から浮き出る足跡は、トリッキーな浸食作用の結果うまれた
- 足跡の正体は一般的な2足歩行の草食恐竜だった
1950年代、オーストラリア東部、クイーンズランド州にあるモーガン山の洞窟から、奇妙な恐竜の足跡が複数発見されました。
当時においても恐竜の足跡は様々な地層から発見されてきましたが、新たに発見された恐竜の足跡は、なんと洞窟の天井にならんでいたのです。
さらに異常だったのは、通常凹みとして発見される足跡が、天井から浮き出るように突出していた点です。
当初に唱えられた第一の仮説は、コウモリのように洞窟にぶら下がった恐竜が、洞窟の天井に向けて逆さにつけた足跡だとするものでした。
しかし、今回オーストラリアの研究者による研究で、洞窟の天井に足跡を残した恐竜が一般的に知られている2足歩行の草食恐竜だということがわかりました。
普通の2足歩行の恐竜が、どうやって天井に足跡をつけたのでしょうか?
研究結果はクイーンズランド大学のアンソニー・ロミリオ氏らによってまとめられ、2月13日に学術雑誌「Historical Biology」に掲載されました。
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08912963.2020.1720014?journalCode=ghbi20
浮き出る足跡ができる仕組み
1950年代には天井から浮き出た足跡の正体は大きな謎とされていましたが、地質学の進歩により謎の解明が行われました。
足跡ができる仕組は以下のとおりになります。
およそ2億年前、洞窟の天井は湿地帯でした。そこにまず、湿地を進む恐竜により足跡がつけられます。
その後、足跡の上に地層が堆積して封印が行われます。
月日が立つにつれ地殻変動によって周囲は山になり、そして長い時間をかけて山は水によって内外を侵食され、小さな洞窟が生まれます。
そして洞窟もまた、内部に侵食を受け、柔らかい層が削られていきます。
2億年前の足跡の地層は幸いにも硬く、侵食に耐えましたが、足跡の下の地層は柔らかかったために削られてしまいました。
以上の結果として、足跡だけが天井から浮き出ることになるのです。
こちらのページでは、恐竜の足跡の3D映像を任意に動かすことができます。
地質学の進歩は、恐竜の足跡は、上の地層が侵食されるだけでなく、下の地層が侵食されても発生することを教えてくれました。
遠い未来、たとえ人類が滅んでも、人類が暮らしていた地層にも足跡がのこるでしょう。
もしかしたら誰かの足跡が、同じように未来の洞窟の天井に浮き出ているかもしれません。
reference: phys / written by ナゾロジー編集部