- スペイン北部の洞窟で、7000年前に虐殺されたグループの遺骨が発見される
- 彼らは、ヨーロッパ東部から移住してきた一団で、異国民を嫌う土着の住民たちに殺されたものと考えられている
スペイン北部、ピレネー山脈の山間にある洞窟「エルス・トロクス(Els Trocs)」で、何者かにより虐殺された9体の遺骨が発見されました。
遺骨は今から7000年ほど前の新石器時代に当たり、ヨーロッパ東部から移住してきたグループのものであることが分かっています。
彼らは、土着の住民たちに殺害されたと考えられており、死後も激しく殴打された痕が見られることから、古代人の「Xenophobic(外国人嫌い)」を証明していると考えられています。
オーストリア・ドナウ私立大学による研究は、2月7日付けで「Scientific Reports」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41598-020-58483-9
「エルス・トロクスの大虐殺」の真相は?
発見された遺骨は全部で9つあり、大人が5体、子供が4体(3〜7歳)でした。
年代測定によると、遺体はすべて紀元前5300年頃のもので、無慈悲に殺害された後に切断されています。
また、5体の大人の頭蓋骨には致命傷となった矢傷が見られ、大人だけが至近距離で矢を射たれたようです。遺骨は、子供も含め、頭部や腕部、脚部に鈍器による外傷の痕が確認されました。
DNA分析の結果、遺骨は、新石器時代にヨーロッパ東部から移住してきた一団に属していたことが判明しています。彼らは、当時としては新しい農耕技術を持っており、土着の狩猟採集民とは遺伝子的に大きく異なります。
また、遺骨の中の30代の男性は、同じく殺害された6歳男児の父親であることも分かりました。
研究チームのカート・アルト氏は「土着の住民が移住者を虐殺した動機はいくつか考えられますが、最も考えられるのはテリトリー争いの問題でしょう」と指摘します。
おそらく、土着の住民たちは、異国から来る人々を忌み嫌い、領土を賭けてしばしば殺し合いをしていたのでしょう。
その証拠に、エルス・トロクスの南230キロ地点にある「Les Dogues」というロックシェルターには、当時の人々が武器を手に争う様子が描かれています。
こうした発見は、従来の考古学研究で主張されていたような、「新石器時代は争いのない平等主義が広く浸透していた」という仮説を180度転覆させるものです。
古代世界に蔓延していたのは、異国民を嫌う「排他主義」だったのかもしれません。