- 私たちの銀河系は上下に歪んでいる
- 歪みができた原因は比較的最近の銀河同士の衝突にあった
これまで天文学者たちは銀河系の正確な形を知るために、あらゆる角度からその構造を検討していました。
1950年代後半には、私たちの天の川銀河系の円盤構造を構成す星々は、一方が上に、もう一方が下に引きずられるように湾曲していると判明していましたが、歪みの原因はわかっていませんでした。
しかし今回、欧州宇宙機関(ESA)の進める「ガイア計画」によって得られたデータから、歪みの原因解明に繋がる大きな成果が得られました。
ガイア計画は、天の川銀河系にある10臆個の恒星(全体の1%に相当)の位置と運動を明らかにすることを目的としています。
ガイア計画によって得られた膨大な星のマッピングデータを調べた結果、歪みの原因は銀河同士の衝突によることが明らかになりました。
衝突が起きたのは、歪みが起きている両端部分。銀河同士の巨大な引力によって、銀河を周っていた多くの星々の軌道(銀河の公転軌道)が乱されてしまったのです。これが銀河の歪みです。
では、私たちの銀河を歪ませたのは一体どこの銀河なのでしょうか?
研究内容はイタリアのトリノ天体物理研究所のE.ポッジョ氏らによってまとめられ、3月2日に学術雑誌「nature astronomy」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1017-3
銀河の歪みは最近うまれた
銀河の歪みを調べるにあたって、イタリアのポッジョ博士らの研究チームは、ガイア計画によって得られた1200万個の恒星の経時的なマッピングデータを用いることにしました。
研究者が歪みの方向と大きさ、運動特性を測定した結果、歪みは銀河のなりたちにかかわるような古いものではなく、最近または進行中の衝突の結果であることがわかりました。
衝突の相手として最も最有力な銀河は、7万8300光年離れた射手座矮小楕円銀河です。
射手座矮小楕円銀河は私たちの天の川銀河の周囲のヘリをかすめるように周回している小さな衛星銀河で、移動方向の後ろ側に過去の衝突の結果として、星の帯を引きずっていることも知られています。
この小さな銀河(恒星10臆個ほど)は過去に何度も私たちの銀河に接近し、そのたびに引力によって天の川銀河の円盤構造に歪みを作ったとのこと。
遠い将来、射手座矮小楕円銀河は私たちの銀河に吸収されてしまうだろうと、研究者たちは考えています。