「ヤンガードリアス」を引き起こした彗星か?
これほどの超高温を生み出せる現象、そして1万2800年前にヤンガードリアスが始まったことを考慮すると、「彗星の落下」が最有力となります。
ヤンガードリアスは、最終氷期(約7万〜1万年前)が終わり、温暖化に向かっていた中で急に起きた寒冷期のことです。
その正確な原因は不明ですが、北米大陸への彗星落下が原因ではないかと言われています。彗星の衝突により巻き上がったチリが空を多い、北半球を中心に広い範囲で寒冷化を引き起こしました。
そして、ヤンガードリアスの影響が及んだ地域の最東端にシリアが位置しているのです。
さらに、アメリカやカナダにある約1万3000年前のYDB層(Younger Dryas Boundary)から、彗星落下を暗示する極小のガラス物質が発見されているのですが、テル・アブ・フレイラで見つかった物質は、それらと特徴が一致しているのです。
以上を踏まえ、ケネット氏は「地球に落下してきた彗星が上空で爆発し、その断片がテル・アブ・フレイラに衝突した」と推測します。
断片とはいってもその威力はすさまじく、居住地を瞬時に壊滅させたでしょう。
本研究は、彗星衝突により滅んだ人類最古の居住地を示すだけでなく、ヤンガードリアスの原因が彗星にあることを裏付けるものともなっています。