どこが奇妙なのか?
脈動する光を放つ恒星はめずらしくありません。
むしろ、ほぼすべての恒星が、内部の対流や磁場から生じる一種の波によって周期的に明滅しています。これらの星に共通する点は、年齢やサイズ、脈動の長短に関係なく、星の全球面にわたって脈動が見られることです。
ところが、HD74423は半球面の先端でしか脈動していなかったのです。
この奇妙な特徴は、HD74423が持つ赤色矮星の伴星にあります。
両者は互いの周囲をわずか1.6日で公転するほど近距離にあり、その近さゆえに、伴星の重力がHD74423を歪めて横向きの涙型に変形させていました。
片側だけが脈動するという理由も、これにあると考えられます。
さらに、HD74423は、保有する化学物質の点から見ても奇妙です。
通常、この種の星は金属を豊富に含むことで知られますが、HD74423は金属量がきわめて低いことが判明しています。
金属性が低い理由としては、まったく同じ特徴を持つ「うしかい座ラムダ型星」のように、星周囲の金属を失ったガスを吸い上げているからでしょう。
ただし金属成分の少なさが、特異な形状や光の脈動のあり方に関係しているかは分かりません。
まだまだ不明な点も多く、今後も調査が続けられるとのことです。