- 超大型望遠鏡VLTは、地球から640光年の位置にある惑星が、鉄の雨を降らせる特殊な環境であることを発見した
- この惑星は温度が2,400℃を超えており、日中は金属を蒸発させるほど熱い
- 強風が吹き荒れ、鉄蒸気が冷えた夜側に運ばれることで夕暮れの地域では鉄が液滴に変わる
鉄の雨が降る惑星なんて言われると、「古い海外のSF小説の設定ですか?」と思ってしまいますが、そんな惑星が実際に発見されたようです。
地球からうお座方向に640光年の距離で見つかったこの惑星は、2016年に発見され「Wasp-76b」と名付けられています。
最新の観測では、この惑星が非常に高温なため金属さえ蒸発させており、昼側で蒸気に変えられた金属が、強風に運ばれて夕暮れの空に鉄の雨を降らせていると報告しています。
地獄なのかロマンチックなのかよくわからなくなってきますが、一体どのようにして鉄の雨が降るのでしょうか。
この惑星の研究は、スイスのジュネーブ大学教授David Ehrenreich氏を筆頭とした研究チームより論文発表され、3月11日付けで科学雑誌『nature』に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2107-1
極端な高温環境の理由
「Wasp-76b」は天文学で「ホット・ジュピター」に分類される惑星です。
ホット・ジュピターとは、太陽に非常に近い位置を回る木星のような巨大ガス惑星のことで、「Wasp-76b」も主星に近いために1年がたったの43時間しかありません。
しかもこの惑星は、自転周期と公転周期が一致していて、太陽に対して常に同じ面を向けています。こうした状態を潮汐ロックといい、地球に対する月と同じような状態になっています。
太陽に対して潮汐ロックを起こしている「Wasp-76b」は、地域によって昼と夜が常に固定された状態です。そのため、昼側は地球の数千倍という放射を主星から受け続け、昼の温度は2400℃を超えています。
一方夜側は、1000℃近く温度が下がり1500℃程度となります。この温度差が、惑星上に昼から夜に向かって激しい強風が発生させているのです。